昨日、今日と本当に嫌なことがあって地の底まで沈んでいたんですけど、なんとか持ち直すことが出来ました。洒落にならないぐらいやばかったというか、一瞬ではあるけど人生の終りを感じてしまった。全身に流れる血が凍りついて、そのままパッタリいきそうなこの感じ。まるでどこかの童話だね。土曜日の夜にやってたディズニー映画特集は面白かったよ。

「あなたは神経は図太い割に、精神は脆いですよね」
訪れた悲恋堂で、店主がそのようなことをぼやいていた。焼き鳥が食いたいというから土産に持って行ってやったのに、本当は串カツが良かったとか、あまり機嫌がいいとはいえなかった。あるいは不甲斐ない私に対して苛立っていたのかもしれないけど、私が見せた同人誌の原稿に対しての評価は辛辣だった。元々が同人嫌いの店主であるけど、それでも本作という行為そのものを否定することはない。だが、その評価は常に厳しく、身内ほどではないものの読める本を要求してくるのだ。
「折角、絵描きさんから絵を貰ったのに使い方が下手過ぎます」
私の装丁や構成に対して赤を入れながら、店主は根本的にダメだと首を振る。次々に入る赤は、まるで私の身体そのものを塗りたくられているような奇妙な感じがした。
「あなたに欠けているもので、決定的なものはなんだと思いますか?」
「才能だろう、言うまでもない」
「いいえ、センスです」
技術はあってもセンスがない、絵描きではない物書きに絵を使いこなすことは出来ない。悲恋堂はため息をつくと、すぐに新しい構成法と装丁を組み立て始める。店主は才能ではなくセンスに生きる人で、感性ではなく感覚で物事を運ぶことの出来る稀有な人材だ。私は単なる才能の欠片もない技術屋に過ぎないけど、店主には技術以上のセンスがある。多少の稚拙さや粗さを許容できるほどの、センセーショナルともいうべきものが。
普段、同人を否定している奴にアドバイスを貰おうとした私も良くないのだが、貰ったアドバイスの的確さと正確さに打ちのめされている辺り、確かに私の精神は脆いのかもしれない。ちなみに、神経太さと精神の脆さの違いはなんだと聞いたら、こう答えた。
「人の気持ちを考えない割に、自分のことではウジウジ悩むってことですよ」
まったく、店主からいじめられているような気分だった。

そんなことが昨日あって、思いの外引きずっていたのか今日仕事で信じられないほどのミスをしてしまった。私は現在、某老舗出版社に居候をしているのだが、一つ間違えばその日の全体における業務を吹き飛ばしていただけに肝が冷えた。結果としてなんとかなったのだが、今までこういうことがなかっただけに、精神的動揺が凄まじいのなんのって。ミスをしない人間など存在しないというけれど、それでもいざ自分がミスしてみるとヘコみますね。私は身内のように完璧主義者じゃないし、物事を完璧に成し遂げるほどの力も持ってないけど、だからこそミスや失敗だけはしたくなかったから、本当にしんどかった。
事の次第を知った店主が連絡をよこしてきたけど、別に謝られることでもなかったし、心が荒んでいたのでかなり突き放した態度を取ってしまった。まあ、喧嘩をしたいわけじゃなかったから早々に店主とは話す機会を持ったけど、こういうことをしてるから私は器量の狭い男と言われるんだろうね。情けなく不甲斐ない自分のことを引き裂いてやりたくなる。
会社のミスはなんとか片付けて大事には至らなかったけど、ちょっと精神的に圧迫されすぎてるのかな。店主にも言われたけど、今の私は階段を登っているのではなく、並行的に存在する道すべてをたぐり寄せて、無理やり一度に進もうとしている状態らしい。これが階段なら一段一段登ることで一つずつ問題を解決していくことができるけど、まとめて同時に行なおうとしているから破綻しているのだと。まったく、その通りである。

とりあえず、体制を立て直す必要があるので、今は夏コミの原稿に集中します。まずはそれを終わらせるべきだし、一皮も二皮も剥けたことで、大分マシな本を作れそうな気がしてきた。先にゼロボンの完成を目指し、三連休明けぐらいには完成させたいですね。構成も装丁も一から見なおして、いいものを仕上げようと思う。
こういう日記を書くのも久しぶりだけど、こんなふうに落ち込んでいるのは私の柄じゃないので、焦り過ぎな自分を少しリラックスさせます。

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