ブリュッセルよりリェージュが好きだ
2010年10月21日 アニメ・マンガ風邪と親知らずと口内炎を併発して倒れそうな今日この頃、皆様は健康に気を使ってらっしゃるでしょうか? 普段から不健康で不摂生な生活をしている私ですが、不思議と病に倒れることは少なく、例えば高熱で寝込むなどということはここ数年ありません。熱が上がらない理由は体質というか身体的問題にあるんですが、そういったことが少ないだけに、たまの病気に滅法弱い。病は気から、などといいますけど私はその傾向が強いのかも知れない。
そんなわけで現在の私は体調絶不調だから、悲恋堂の店主から直接会って話がしたいといわれたときは正直迷った。他の病気ならまだしも人に感染しやすい風邪であるし、一人暮らしで世捨て人の店主に倒れられたら困る。私以上に医者嫌いであるし、病院などまず行くはずもないから。こうした理由から体調不良を理由に断ることは間違ってないはずだけど、一週間以上店主に会っていなかったのと、わざわざ会って話がしたいというぐらいだから、よほど重要なことなのだろうと思い、結局は赴くことにしました。
実は最初朝早くにいったんですけど、かなり長い話になるということだったので、夜に出直してくることに。その際、体調が悪いのを一瞬で見抜かれたんだけど、だからといって日を改めるというつもりにはならなかったらしい。まあ、風邪はともかく親知らずは取らない限り治りようがないし、口内炎もしばらく掛かりそうだからね。待っていられないと言われれば、その通りだとしか答えようがない。
夜になって再訪した悲恋堂は、何故かSugar Baby Loveが奥から流れてきており、店主は鼻歌なんて歌っていた。石田耀子版というのが、奴なりの拘りなのだろう。今朝よりも調子が悪そうですね、まあ、上がってくださいと店の奥に通されて、瓶に入った牛乳を出される。明治ではなく森永だったが、森永乳業が瓶牛乳を宅配していたとは訊かない。いや、しているのかも知れないが、私の地元では明治だったので、ちょっとだけ気になった。次に出されたのはお茶菓子のゴーフル。これが出たときはさすがの私も物申してしまった。
「まて、なんでワッフルじゃないんだ」
「ストロープなんて普通ありませんよ」
「曲的にベルギーだろ、普通は!?」
細かいことを気にする男ですね、といわれたが、気分的な問題である。それに私はベルギーワッフルが好きなのである。秋葉原のマネケンとかを利用することもあります。昔は横浜にもあったんだけどね、いつの間にか潰れてしまった。
「今日呼んだのは他でもありません。あなたの最近における文章について、少しお話ししたいことがありまして」
本当は朝まで話したかったそうなのだが、私の体調が芳しくないことを悟ってか2時間程度で切り上げてくれた。そして、私はその2時間ずっと説教をされた。店主に苦言を呈されたり、創作物や日記の内容にケチを付けられるのはしょっちゅうであるが、説教を受けるというのは久々のことであり、笑って流すには表情が真剣すぎた。
説教は昨今の日記についてが主であり、文章が否定論で構成されすぎていると釘を刺された。後ろ向きで否定的、そして批判的な内容であることは自覚していたから、今さらどうしたという気分であったんだけど、店主の言葉は私の予想を飛び越えた位置にまで飛んでいく。
「あなたはアニメにおける主人公のキャラ改変について不平不満を繰り返していますが、あなたの言えた義理ではないんじゃないですか?」
「というと?」
「ご自分だって、二次創作で同じことをしたではないですか」
私がヨスガ本でキャラ改変を行った? そうではなかった。店主が言っているのは、私が昔出した新書版の同人小説のことだった。二次創作は好きじゃないという店主であるが、書いた物を渡せば一応目を通してくれるのだ。
「あの作品も随分とキャラ改変が多かった気がします。ネットでの評判は、改変どころか改悪でしたっけ?」
「それがなんだって言うんだ」
「同じなんですよ、あなたが言ってることは、あなたが昔やったことと同じなんです」
自分のことを棚に上げて、一体なにを言ってるんだ――店主が私に伝えたかったのはまさしくそれであり、過去も忘れて他者を非難する資格があなたにあるのかと、まあ、そういうことだった。
「手法の是非について、それが作品にあっているかあっていないかは、まあ、いくらでも論じればいいでしょう。文句や不満もありましょうし、そのことには問題はないと思います。しかしですね」
ハルのキャラについて、春日野悠という主人公のキャラ改変について私が不平を言うのはお門違いではないかと、店主は厳しい口調で批判してきた。
「あなたがその昔、件の二次創作を執筆していたとき、様々不満をぶつけてくる人たちがいました。キャラの性格が違いすぎる、改変だ、改悪だ、これは一体どういうことなんだと。あなたはそういった人たちになんて答えました? 確かこうでしたよね、『物語を作る上で、キャラをもっとも適した位置に配置した』でしたか?」
「一字一句その通りだとは言わないが、よく憶えてるな」
「B6版の本も読みましたからね。当時、あなたはキャラではなく話を優先した。物語を組み立てる上での手法との一つとして、キャラクターを駒やピースのように扱った」
どこからともなく将棋盤を取り出してきた店主は、盤上に駒を並べていく。
「それが物語を面白くする方法であり、あなたは物語を優先するためにキャラを変えざるを得なかった。誰になんと批判されようと、そうしなければ話が成り立たなかったから」
パチパチと並べられていく駒は、なにかの定石なのだろう。そこにそれがなくては盤面が成り立たないと言っているかのように、綺麗な並びになっていた。私は、店主に言い返すことが出来なかった。
「同じです。あなたが今批判しているものは、過去のあなたと同じなんですよ。新しい手法を実践するが為に主人公を改悪した人たちと、自分の物語を完成させるために多くのキャラを改変したあなたに、一体どれほどの違いがありますか? 商業と同人の違いはあれど、精神的骨格は同じでしょう」
目から鱗は落ちなかった。気付かされた事実の強烈さといったら、私の表情を吹き飛ばすぐらいには強烈なものだった。引きつった笑みすら浮かべることが出来ず、ぐうの音も出ないとはまさにこのことか。
「あなたはこうも言ってましたね? 別にキャラを改変しているつもりはないと。例のアニメを作っている人も、きっと似たようなを言うと思いますよ。自覚がない、いえ、出来ないんですね。自分の話の中ではこいつはこういうキャラだというのが凝り固まって、決定事項として存在しているから、他人からおかしいと言われても理解することが出来ないんです」
無駄なことは無駄だし、覆せないものは覆せない。人の認識を変えるということは、その人格を左右することなのだ。あいつはああだ、こいつはこんな奴じゃない、そいつはそうでなくてはいけないなど、少なくとも同人家の言えたことか。
ここから先はずっと店主による同人批判と二次創作批難の話に移ったので省略するけど、正直な話し、完全に打ちのめされました。自身の身勝手さと傲慢さを平手打ちにされたというか、確かにその通りだ。私が否定していることは、私が過去にやったそれと同じなんだ。以前の日記で、私の古い二次創作を呼んだ人はこんな気持ちだったのか、みたいなことを書いたけど、似ているどころかまったく同じことをしていたわけだ。にもかかわらず、私は自分を棚に上げて随分なことを言ってしまった。なんて最低なのだろうか。
体調不良に精神衰弱が加わった気もしたが、おかげでなにか目が覚めたような気分になったのも事実である。去り際に悲恋堂の店主はこうも言っていた。
「否定、批判、批難、私は別にそれらすべてを間違いだというわけじゃありません。ですが、今回のあなたの主張は明らかにおかしいと、そう思ったからこうして呼び出したんです。あなたの言っていることは判りますし、おそらくその主張は正鵠を射ているのだと思いますが、それを言う前に振り返ることがあるだろうと、そういうわけです」
所詮は個人の日記であるし、自らの過ちに気付いたというのなら、殊更咎めることはなにもない。これからも好きなように書けばいいとのことだったけど、さすがにここまで説教された後に、何食わぬ顔で日記を再開することは出来ない。せめて1日は間を置いて、今日合ったこと忘れないためにも、店主に言われたこと場を噛みしめる意味でも、私は違うことを書かなければいけないと、そう思ったから。まだまだ未熟だな、私は。俗世との縁が薄い人間に諭されているようじゃ、まだまだですね。
ありがとう、我が親友。おかげで色々と目が覚めた。
そんなわけで現在の私は体調絶不調だから、悲恋堂の店主から直接会って話がしたいといわれたときは正直迷った。他の病気ならまだしも人に感染しやすい風邪であるし、一人暮らしで世捨て人の店主に倒れられたら困る。私以上に医者嫌いであるし、病院などまず行くはずもないから。こうした理由から体調不良を理由に断ることは間違ってないはずだけど、一週間以上店主に会っていなかったのと、わざわざ会って話がしたいというぐらいだから、よほど重要なことなのだろうと思い、結局は赴くことにしました。
実は最初朝早くにいったんですけど、かなり長い話になるということだったので、夜に出直してくることに。その際、体調が悪いのを一瞬で見抜かれたんだけど、だからといって日を改めるというつもりにはならなかったらしい。まあ、風邪はともかく親知らずは取らない限り治りようがないし、口内炎もしばらく掛かりそうだからね。待っていられないと言われれば、その通りだとしか答えようがない。
夜になって再訪した悲恋堂は、何故かSugar Baby Loveが奥から流れてきており、店主は鼻歌なんて歌っていた。石田耀子版というのが、奴なりの拘りなのだろう。今朝よりも調子が悪そうですね、まあ、上がってくださいと店の奥に通されて、瓶に入った牛乳を出される。明治ではなく森永だったが、森永乳業が瓶牛乳を宅配していたとは訊かない。いや、しているのかも知れないが、私の地元では明治だったので、ちょっとだけ気になった。次に出されたのはお茶菓子のゴーフル。これが出たときはさすがの私も物申してしまった。
「まて、なんでワッフルじゃないんだ」
「ストロープなんて普通ありませんよ」
「曲的にベルギーだろ、普通は!?」
細かいことを気にする男ですね、といわれたが、気分的な問題である。それに私はベルギーワッフルが好きなのである。秋葉原のマネケンとかを利用することもあります。昔は横浜にもあったんだけどね、いつの間にか潰れてしまった。
「今日呼んだのは他でもありません。あなたの最近における文章について、少しお話ししたいことがありまして」
本当は朝まで話したかったそうなのだが、私の体調が芳しくないことを悟ってか2時間程度で切り上げてくれた。そして、私はその2時間ずっと説教をされた。店主に苦言を呈されたり、創作物や日記の内容にケチを付けられるのはしょっちゅうであるが、説教を受けるというのは久々のことであり、笑って流すには表情が真剣すぎた。
説教は昨今の日記についてが主であり、文章が否定論で構成されすぎていると釘を刺された。後ろ向きで否定的、そして批判的な内容であることは自覚していたから、今さらどうしたという気分であったんだけど、店主の言葉は私の予想を飛び越えた位置にまで飛んでいく。
「あなたはアニメにおける主人公のキャラ改変について不平不満を繰り返していますが、あなたの言えた義理ではないんじゃないですか?」
「というと?」
「ご自分だって、二次創作で同じことをしたではないですか」
私がヨスガ本でキャラ改変を行った? そうではなかった。店主が言っているのは、私が昔出した新書版の同人小説のことだった。二次創作は好きじゃないという店主であるが、書いた物を渡せば一応目を通してくれるのだ。
「あの作品も随分とキャラ改変が多かった気がします。ネットでの評判は、改変どころか改悪でしたっけ?」
「それがなんだって言うんだ」
「同じなんですよ、あなたが言ってることは、あなたが昔やったことと同じなんです」
自分のことを棚に上げて、一体なにを言ってるんだ――店主が私に伝えたかったのはまさしくそれであり、過去も忘れて他者を非難する資格があなたにあるのかと、まあ、そういうことだった。
「手法の是非について、それが作品にあっているかあっていないかは、まあ、いくらでも論じればいいでしょう。文句や不満もありましょうし、そのことには問題はないと思います。しかしですね」
ハルのキャラについて、春日野悠という主人公のキャラ改変について私が不平を言うのはお門違いではないかと、店主は厳しい口調で批判してきた。
「あなたがその昔、件の二次創作を執筆していたとき、様々不満をぶつけてくる人たちがいました。キャラの性格が違いすぎる、改変だ、改悪だ、これは一体どういうことなんだと。あなたはそういった人たちになんて答えました? 確かこうでしたよね、『物語を作る上で、キャラをもっとも適した位置に配置した』でしたか?」
「一字一句その通りだとは言わないが、よく憶えてるな」
「B6版の本も読みましたからね。当時、あなたはキャラではなく話を優先した。物語を組み立てる上での手法との一つとして、キャラクターを駒やピースのように扱った」
どこからともなく将棋盤を取り出してきた店主は、盤上に駒を並べていく。
「それが物語を面白くする方法であり、あなたは物語を優先するためにキャラを変えざるを得なかった。誰になんと批判されようと、そうしなければ話が成り立たなかったから」
パチパチと並べられていく駒は、なにかの定石なのだろう。そこにそれがなくては盤面が成り立たないと言っているかのように、綺麗な並びになっていた。私は、店主に言い返すことが出来なかった。
「同じです。あなたが今批判しているものは、過去のあなたと同じなんですよ。新しい手法を実践するが為に主人公を改悪した人たちと、自分の物語を完成させるために多くのキャラを改変したあなたに、一体どれほどの違いがありますか? 商業と同人の違いはあれど、精神的骨格は同じでしょう」
目から鱗は落ちなかった。気付かされた事実の強烈さといったら、私の表情を吹き飛ばすぐらいには強烈なものだった。引きつった笑みすら浮かべることが出来ず、ぐうの音も出ないとはまさにこのことか。
「あなたはこうも言ってましたね? 別にキャラを改変しているつもりはないと。例のアニメを作っている人も、きっと似たようなを言うと思いますよ。自覚がない、いえ、出来ないんですね。自分の話の中ではこいつはこういうキャラだというのが凝り固まって、決定事項として存在しているから、他人からおかしいと言われても理解することが出来ないんです」
無駄なことは無駄だし、覆せないものは覆せない。人の認識を変えるということは、その人格を左右することなのだ。あいつはああだ、こいつはこんな奴じゃない、そいつはそうでなくてはいけないなど、少なくとも同人家の言えたことか。
ここから先はずっと店主による同人批判と二次創作批難の話に移ったので省略するけど、正直な話し、完全に打ちのめされました。自身の身勝手さと傲慢さを平手打ちにされたというか、確かにその通りだ。私が否定していることは、私が過去にやったそれと同じなんだ。以前の日記で、私の古い二次創作を呼んだ人はこんな気持ちだったのか、みたいなことを書いたけど、似ているどころかまったく同じことをしていたわけだ。にもかかわらず、私は自分を棚に上げて随分なことを言ってしまった。なんて最低なのだろうか。
体調不良に精神衰弱が加わった気もしたが、おかげでなにか目が覚めたような気分になったのも事実である。去り際に悲恋堂の店主はこうも言っていた。
「否定、批判、批難、私は別にそれらすべてを間違いだというわけじゃありません。ですが、今回のあなたの主張は明らかにおかしいと、そう思ったからこうして呼び出したんです。あなたの言っていることは判りますし、おそらくその主張は正鵠を射ているのだと思いますが、それを言う前に振り返ることがあるだろうと、そういうわけです」
所詮は個人の日記であるし、自らの過ちに気付いたというのなら、殊更咎めることはなにもない。これからも好きなように書けばいいとのことだったけど、さすがにここまで説教された後に、何食わぬ顔で日記を再開することは出来ない。せめて1日は間を置いて、今日合ったこと忘れないためにも、店主に言われたこと場を噛みしめる意味でも、私は違うことを書かなければいけないと、そう思ったから。まだまだ未熟だな、私は。俗世との縁が薄い人間に諭されているようじゃ、まだまだですね。
ありがとう、我が親友。おかげで色々と目が覚めた。
コメント