職場でボケーッとしていたら、唐突に各ライトノベルレーベルの新刊案内を渡された。雑誌刊行している出版社には、書評とかで取り上げてもらうために送られてくることが多いのだけど、なんていかこう、代わり映えのしないラインナップですね。人気作品ばかりが全面に出ているという意味じゃなくて、勿論新人作家も既存作家も色々新作を発表しているわけなんだけど、あらすじだけ読むとどれも同じような内容に見えるというか、流行もあるとはいえ少し偏り過ぎじゃないかと。

ライトノベルに限らず、創作物が世の中の流行や時事ネタを作品に活かしたり反映したりすることはよくあることで、例えばエロゲなんかではそれが顕著ですよね。PC媒体であり、ネットユーザーが購買層に多いから、ネットにおける一過性のブームや小ネタなどを迷うことなく仕込むことが出来る。あれは書籍と違って重版や再販が少ない、言ってしまえば短期間での売り切りを目的に作られているから、小ネタ等の期限切れをあまり考える必要がないのです。
流行の影響といえば漫画の世界も同じであり、一時期DEATH NOTEがブームだった頃は少年誌はおろか少女漫画にまでDEATH NOTEもどきのような作品が増えていましたね。もっと遡れば金田一少年の事件簿がヒットしていた頃は、それに続く名探偵コナンもヒットしたこともあって、少年誌を中心に推理漫画が溢れかえっていました。編集者が漫画家に対して、「○○みたいなの書いてよ」と具体的な作品名を上げて、亜流ないし劣化作品を書かせることも珍しくはありませんでした。出版社というのは売上が見込めるのであれば、二匹目だろうと三匹目だろうとドジョウを狙い続けますからね。これはまあ時代の波や流れも影響していますけど、特撮の世界なんかでも戦隊ヒーローはそのとき流行っているものをテーマに設定を作っていくというし、最新作で言えばあからさまにワンピースに乗っかっている感じですよね。次は妖怪か、それとも戦国かなんて言われてますけど、あれもまた分かりやすい流行を反映している作風の一つでしょう。典型的というか、あそこまで堂々としているのを見るとなにも言えなくなってしまうよね。決してパクッているわけではないし、あくまでネタやジャンルを拝借しているだけに過ぎないのだから。少し節操がないとは思うけどさ。

話を最初に戻して、ライトノベルの世界における流行の反映具合はどうなのかといえば、まあ、その時代によって差はありますけど、影響という意味では色濃く出ていると思います。そもそもレーベル単位で自分のところの色合いを決めてしまっているところが多いから、わかり易い例で言えばMF文庫やHJ文庫ですか? あの二つはエロ萌えなラブコメをしか売れない現状を踏まえて、それしかやらない的な発言をしていますからね。まあ、いつの時代もエロいものには一定の需要があるわけだから、流行とはまた違うのかもしれないけど、最近はアニメなどでも限界への挑戦などと称して、一般作にもかかわらず恥知らずなエロアニメを量産していますから、そういった作品を増やすことでアニメ化等を狙っていくというのは、それほど間違った考えではないでしょう。ラノベに限らず、小説なんてものは商売であり商品ですからね。
これが投稿されてくる作品、つまり新人賞になってくるとかなり顕著で、書き手はとにかく流行を作品に取り入れようとする傾向にします。エヴァが流行っていたときは主人公がみんな碇シンジみたいな根暗になったり、西尾維新が一世を風靡していた時期は似たような文体の作品が多かった。設定面でいうなら、ハリーポッター以降は一つの巨大な空間で登場人物を生活させる作品が増えたようね。具体的に言えば漫画ならネギまで、ラノベなら禁書でしょうか。最近は禁書もどきみたいな作品も多いようで、知り合いが電撃の下読みやってますけど、そのレーベルで読んだことがあるかのような作品の投稿は少なくないらしい。これは、「ここはこういう作品を既に出しているから、このジャンルやネタはウケるんじゃないか?」という一種の考えに基づくものだけど、既に人気作がある状態で、そんな二番煎じが必要とされるかは疑問だよね。むしろ、そのレーベルにないものを求めるんじゃないかな? DEATH NOTEや探偵漫画の例じゃないけど。

私はハッキリいうと、今時の流行が作風に反映されない男です。これはなにも流行に左右されない俺カッコイイなどではなく、単に発想が古臭いだけに過ぎません。私は歳の割に古典的にして正統派な作品を愛する者であり、最近珍しい奴として主に年配の方々から一目置かれているらしいんだけど、逆に言えば主な購買層である若者にはまったく通用しないってことですからね。なんとか感性の修正を行いたいものですが、こればっかりはそう簡単にはいかないんだろうな。

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