※あまりにこの日記へのアクセスが多いので、2012年版の詳細な感想を書きました。併せてご覧下さい。(2012年7月3日)
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メロンブックスで購入したんですが、他のところにすればよかったかも知れない。基本的にRococoWorksの作品は絵と雰囲気が好きだから買うことにしてるんですが、体験版はそんなにやらないんですよ。特に今回の作品は第一印象から購入を決めていましたし、公式サイト以外でこれといった情報を集めようとしなかった。そのため、私にとってメインヒロインであるテレーゼは、主人公であるクロードのであって、当然ながら姉属性のない私はそれ以外の特典がつく店舗を選ぶじゃないですか? それがもう、端から大間違いだったというわけで。

結論から先に行ってしまうと、いつものRococoWorksだったと思います。雰囲気やキャラはいいんだけど、シナリオの深みがまったくないせいか、尻切れトンボというか、なんとも言えない中途半端さが残り、消化不良を起こしそうな感じ。勿論、話としてはどのルートも一応完結しているから、この例えは間違っているのかも知れないけど……某大型電子掲示板にあるスレの言い回しをかりるなら、ダイジェストムービーを長々見せられたと思ったら、いつの間にか打ち切りで終わっていたというの? いつもながら序盤は本当にいいんだけど、結末までの過程がスカスカだから、オチに対する説得力のようなものがないんだよね。取って付けたような、とは言わないけど、如何にも間に合わせというか、感動もなにもあったもんじゃないあっさり感。テレーゼシナリオはまだしもメインヒロインということもあって、それなりに頑張っていたと思うんだけど、他のヒロインにいたっては教皇にして死神であるブリジット以外、その存在理由すら分からないほどに薄っぺらいんですよ。いや、理由というよりは価値かな。そのシナリオ、ルートが本当に必要なのかと考えてしまうほどに、魅力がない以前の問題となってしまっている。
勿論、外見や容姿、性格などキャラクターとしての魅力はあるんだろうけど、それが作品にとってなんの意味があるのかと言われると、もはや数合わせですらないんですよ。だって、テレーゼと共にパッケージを占め、特典は同じぐらいの数を持つフラウエンですら、物語の本筋的にはこれといって絡んでいないのだから。

要するに、ヴァニタスの羊というエロゲは、テレーゼだけがメインのゲームであって、他のヒロインは本当にオマケ程度でしかないんですよ。私は順当にテレーゼシナリオからプレイしたんだけど、続けて他のヒロインのルートに入ってそれを痛感させられた。特に娼婦のリアーヌについてはなんのためにいるのかさえも分からないというか、クロードがテレーゼを捨ててあんな商売女に走ることが理解不能。しかも、別ルートでは人殺しの暗殺者ですよ? 実際に殺さなかったというだけで、その技術がある以上は経験者のはずだし。テレーゼが必死に悩んで、結婚を祝福するところか不憫すぎてみていられなかった。数合わせにしろ、もう少しやりようがあっただろう。
フラウエンに関しては、この娘もまたクロードとくっつく必要性がないんだよね。彼女のシナリオだけヴィクトールお兄様が多少良い人をやってましたけど、結局消された上に命がけで守った妹はクロードと特に理由もなく結ばれるし。すべてを捨てた上に、身まで挺したというのに、あんまりじゃないかな。他ルートでも基本雑魚だし、消えるか捕まるかしかないなんて……そりゃあ、野心家で陰謀家かも知れないけど、そこまで悪人じゃないんだからさ。フラウエンも、想像してたのと少しキャラが違ったというか、使役している間抜けな紙は可愛かったと思う。
ブリジットのシナリオはまだマシな方でしたね。作品における魔術的な部分の謎を解き明かした……というほどではないですが、必要ないと言い捨てるには、少々惜しい感じもします。テレーゼには敵わないにせよ、ブリジットはエンゲルブルグという舞台に沿ったヒロインですから、三年前にやってきたリアーヌや、ずっと屋敷に閉じこもっていたフラウエンとは違う。教皇という地位ある立場もキャラの重要性を引き立てますし、ぶっちゃけフラウエン以上の存在感があった。惜しむらくは、途中退場してしまうためヒロインとして地味なことですか。ブリジットのシナリオは他のヒロインの秘密とか、天使のことなど、様々な秘密が分かるんですけど、そこもなんか中途半端でね。イマイチ風呂敷を畳みきれてないところがあった。

まあ、テレーゼルートが一番であり、他にはなにもいらない作品でした。リアーヌのシナリオとか邪魔でしかないし、フラウエンにせよブリジットにせよ、個別ルートが必要なのかどうかという疑問があった。この作品は中世欧風戦記浪漫群像劇を謳っていて、どこか戦記で浪漫なのかと思ったけど、群像劇というからにはシナリオ分けせずに、クロードとテレーゼの物語に、個々のヒロインが少しずつ絡んでくる、という構成をしたほうが良かったんじゃないだろうか? まさか、視点の切り替わりで群像劇ということなのかな。
変にサブヒロインたちの個別ルートを作ってしまったせいか、肝心のテレーゼとの関係がおなざりになってしまったというか、9年という歳月の重みに比較して、別れるとき、関係性を解消するときがあっさり過ぎて、だからダイジェスト版なんて呼ばれるんでしょうね。
そもそも、大前提としてのテレーゼがいるにも関わらず、クロードが他のヒロインに靡くことへの説得力がまるでないんですよ。ブリジットだけは彼女の境遇や出会い方を考えれば分からんでもないんだけど、他のヒロインとくっつくことに対して、クロードの中に戸惑いはあっても躊躇いがなく、テレーゼのことを考えての葛藤というものが存在しないのは苛立たしかった。テレーゼ自身はリアーヌのルートで1回だけ悩んでいたようですけど、そういうところが適当だったのは戴けなかったですね。仮にも9年間手と手をとりあって生きてきたのだから、少しぐらいは悩もうよと。
ただ、究極的な話をすると、完全にクロードとテレーゼの関係性を断ち切りには死別ぐらいしかないから、それをやらないためには、あれぐらいあっさりさせるしかなかったのかな。いや、もっとやりようはあったはずだよ。いくらなんでも、テレーゼが可哀想過ぎる。

個人的にはリアーヌルートを削除してジョヴァンニとウーゴの話をやり、フラウエンはヴィクトールとの兄妹話に変更、そしてブリジットで魔術や天使の謎解きをして、テレーゼルートで9年前のことや、すべての物語を解き明かす……という構成のほうが良かったんじゃないだろうか。エロゲの基本形式に拘るあまり、どの話もスッカスカになってしまった感がして、本当に残念でならない。そして、テレーゼを姉キャラとして回避し、特典を集めようとしなかった私は物凄い愚か者だった。
やけに記入欄が狭苦しいアンケートハガキが付いてきましたけど、全体的に物足りない話であったことは違いないので、是非テレーゼ完全版の製作をFDでもお返しディスクでも構わないから作って欲しいものです。物語としてはそれほどでもなかったけど、作品としてはそれなりだったというのが、私の評価かな。エロゲというより、絵の質がいい絵本や童話を読んでいる気分ではあったけど。

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