スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)
2012年6月11日 アニメ・マンガ
久々に、といっても結構前の話なんですがライトノベルというものを買ってみました。ツイッターで武藤此史さんが宣伝しているのを見かけて、作者が瀬尾つかささんということだったので興味を持ちまして。瀬尾さんは主に富士見ファンタジアや一迅社文庫などで活動をされているラノベ作家ですが、昨年ハヤカワJA文庫からSF小説を上下巻で刊行しており、それがなかなかに印象深い作品だったのでね。まあ、暇つぶしぐらいにはなるだろうと、そう思って買ったのだけど……これがどうした、かなり面白い、そしてよく出来た作品でした。
スカイ・ワールドがどういう話なのか、まずはBOOKデータベースのあらすじを引用してみましょう。
オンラインゲームを題材にした小説といえば、私はハヤカワJA文庫から刊行されたスラムオンラインを思い出します。やはりラノベ作家である桜坂洋が書いた作品であり、こちらはオンラインの格ゲーをメインにした物語。主人公はゲーム上では強者の空手使いだけど、現実では淡々とした日々を過ごす大学生であり、ネットと現実の狭間に揺れ動く中で、一つの結果と答えを見つけていくという話なんですが、スカイ・ワールドとの違いは、明確に現実世界の描写があるということ。オンラインとオフラインの切り替えがなされているとでも言うのか、大学生としての主人公と空手使いとしての主人公、どちらも同じ人物ではあるけど、そこには絶対的な違いがあり、故に彼は選ばなけれないけないとか、そんな感じの。
逆にスラムオンラインと違い、スカイ・ワールドは完全にゲームの中が全てであり、絶対的なリアルとして描写されています。キャラクターのアバターは現実世界の自分をモデルにしており、そのため名前も本名か、それに近いものが多いなど、オンラインゲームであったはずのものが、現実世界として成り立っているのですね。ゲームの世界に取り込まれたという割には、出てくる登場人物は誰も彼もそれを受け入れているのだけど、これは作品開始時点で既に事件から三ヵ月という月日が流れていることが理由の一つだと思います。一般的に、こういった異世界ファンタジーは、主人公やヒロインが現実世界の人間である場合、大抵異世界へ来た瞬間から物語が始まりますよね? 例えば、ゼロの使い魔なんかは主人公の才人がルイズに召喚されたシーンが1ページ目なわけですし。
勿論、スカイ・ワールドにおいても主人公であるジュンが世界に降り立った経緯は書かれるのですが、それはあくまで回想シーンの一つで合って、物語の出発点ではありません。もっと言えば、この1巻さえも、これから始まる長い冒険の旅の始まりに過ぎないのかもしれない。
主人公のジュンには一つの特徴があり、彼は登場した時点で最強に近い実力の持ち主でした。元々、オンライゲーム慣れしていることもあり、他の登場人物と違って自らの意思でスカイ・ワールドに降りたことから、精神的な割り切りが出来てるんでしょうね。クエストマニアということで、RPGは可能な限りレベルを上げてから次のステージに進むタイプなのか、とにかく強い。上級のモンスターは勿論、多勢に無勢な対人戦闘でも勝利するなど、最初からレベルMAXと言われても納得してしまうかのような、圧倒的な強さを誇っています。
けれど、それは不思議な事でもなんでもなくて、ジュンを作者の分身として仮定するなら、むしろ当然のことなんですよ。先程のスラムオンラインにも言えることですが、ゲームを題材にした小説を書く以上、作者はそれに対する知識に精通しており、造詣が深いことが絶対条件なわけだけど、自分のゲームにおける経験則や体験談などを書くにあたって、主人公がゲームに対して無知だと活かせる経験も活かせないし、発揮できる知識も発揮できないじゃないですか? そしてなにより、自分の分身である主人公が弱いのでは、書き手としても面白味がない。格ゲーにせよ、MMORPGにせよ、プレイヤーは大抵強くなることが目的なんだから。
故に主人公は最強か、あるいはそれなりの実力と知識を兼ね備えた存在として書く必要があり、ゲームに対しての初心者や無知は、ヒロインに対して求めざるを得ません。読者目線の存在というわけで、スカイ・ワールドの場合はかすみがそれに当たりますね。厳格な家庭に育ち、友だちに誘われるまでゲームなどやったこともなかった箱入り娘。そんな彼女に、主人公であるジュンはあくまで上位者として、経験者として接していくわけです。これによって、パーティのバランスをとっているわけだ。
ヒロインはカスミということになっていますが、この作品は女性キャラクターが多く登場し、もっと言えば主人公以外は全員が女性ないし少女です。かすみと共にジュンの元へやってきた白魔術師のエリは、既にカスミと双璧をなすダブルヒロインとなりつつありますし、ジュンをスカイ・ワールドへと導いた謎の少女アリスは、どことなくジュンに対する執着心を見せています。そして、カスミの親友であるサクヤもまた……
富士見ファンタジアは基本的にシリーズ物しか出さないところですし、スカイ・ワールドも01と表記されているからには続刊が出るのでしょう。私としては、久々に読んでいて面白い、当たりのラノベだったので、これは普通に続きが読みたいと思ってます。ゲームだった頃の名残りや、システム面の描写が細かいせいか映像化には不向きなような気もしますけど、まずはしっかりと巻数を重ねて、もっと彼らの冒険の旅を見せて貰いたいですね。ところで、スカイ・ワールドは浮遊島が舞台であり、1巻は第八軌道の島がメインだったわけだけど、これって某魔神英雄伝ワタルみたいに一つずつ島を攻略し、上に登っていくシステムになるのかな。だとしたら、最低でも8巻は出ることになるけど、いやはやなんともはや、早く続きが読みたいよ。
スカイ・ワールドがどういう話なのか、まずはBOOKデータベースのあらすじを引用してみましょう。
スカイワールド―それは魔法と科学技術が同居する世界で、無数に浮かぶ島から島へと飛空艇で旅をするオンラインRPG。運営開始から一週間、数万人ものプレイヤーがスカイワールドの中に閉じ込められる事件が発生する。このようにスカイ・ワールドはオンラインRPGの世界を舞台にした冒険ファンタジーです。しかし、ゲーム上のロールプレイを記録したものではなく、非現実が現実となってしまった、異世界モノに等しいものであることが、あらすじを読めば分かると思います。いつかの日記でファンタジー小説の今みたいなことを書いたとき、私はファンタジーの人気が落ちたのは現代人における外国観の変化が原因ではないか、みたいなことを書いたと思うけど、オンラインゲームに求める異世界ってのは、ある意味で最近の主流だと思うんですよ。.hack以降は特にそれが顕著だと思うし、和風ファンタジーとか、中華ファンタジーとか、そういうのに舞台を変えつつ続いてきたファンタジー小説の、新たな形とでも言うの? 架空世界を通常とは違った形で提供することにより、作品に今までとは異なる発展性を持たせている気がする。
プレイヤーたちがいまだ現実世界への出口を見つけられない中、ジュンこと三木盛淳一朗は誰ともチームを組むことなく、持ち前のゲームセンスを武器に単独で攻略を進めていた。しかしある日、迷子の初心者・かすみと白魔術師のエリに協力を求められてしまい、三人で難クエストに挑むことになるのだが――。
天空に浮かぶ唯一の浮遊島、第一軌道『アイオーン』を目指す、オンライン冒険ファンタジー。
オンラインゲームを題材にした小説といえば、私はハヤカワJA文庫から刊行されたスラムオンラインを思い出します。やはりラノベ作家である桜坂洋が書いた作品であり、こちらはオンラインの格ゲーをメインにした物語。主人公はゲーム上では強者の空手使いだけど、現実では淡々とした日々を過ごす大学生であり、ネットと現実の狭間に揺れ動く中で、一つの結果と答えを見つけていくという話なんですが、スカイ・ワールドとの違いは、明確に現実世界の描写があるということ。オンラインとオフラインの切り替えがなされているとでも言うのか、大学生としての主人公と空手使いとしての主人公、どちらも同じ人物ではあるけど、そこには絶対的な違いがあり、故に彼は選ばなけれないけないとか、そんな感じの。
逆にスラムオンラインと違い、スカイ・ワールドは完全にゲームの中が全てであり、絶対的なリアルとして描写されています。キャラクターのアバターは現実世界の自分をモデルにしており、そのため名前も本名か、それに近いものが多いなど、オンラインゲームであったはずのものが、現実世界として成り立っているのですね。ゲームの世界に取り込まれたという割には、出てくる登場人物は誰も彼もそれを受け入れているのだけど、これは作品開始時点で既に事件から三ヵ月という月日が流れていることが理由の一つだと思います。一般的に、こういった異世界ファンタジーは、主人公やヒロインが現実世界の人間である場合、大抵異世界へ来た瞬間から物語が始まりますよね? 例えば、ゼロの使い魔なんかは主人公の才人がルイズに召喚されたシーンが1ページ目なわけですし。
勿論、スカイ・ワールドにおいても主人公であるジュンが世界に降り立った経緯は書かれるのですが、それはあくまで回想シーンの一つで合って、物語の出発点ではありません。もっと言えば、この1巻さえも、これから始まる長い冒険の旅の始まりに過ぎないのかもしれない。
主人公のジュンには一つの特徴があり、彼は登場した時点で最強に近い実力の持ち主でした。元々、オンライゲーム慣れしていることもあり、他の登場人物と違って自らの意思でスカイ・ワールドに降りたことから、精神的な割り切りが出来てるんでしょうね。クエストマニアということで、RPGは可能な限りレベルを上げてから次のステージに進むタイプなのか、とにかく強い。上級のモンスターは勿論、多勢に無勢な対人戦闘でも勝利するなど、最初からレベルMAXと言われても納得してしまうかのような、圧倒的な強さを誇っています。
けれど、それは不思議な事でもなんでもなくて、ジュンを作者の分身として仮定するなら、むしろ当然のことなんですよ。先程のスラムオンラインにも言えることですが、ゲームを題材にした小説を書く以上、作者はそれに対する知識に精通しており、造詣が深いことが絶対条件なわけだけど、自分のゲームにおける経験則や体験談などを書くにあたって、主人公がゲームに対して無知だと活かせる経験も活かせないし、発揮できる知識も発揮できないじゃないですか? そしてなにより、自分の分身である主人公が弱いのでは、書き手としても面白味がない。格ゲーにせよ、MMORPGにせよ、プレイヤーは大抵強くなることが目的なんだから。
故に主人公は最強か、あるいはそれなりの実力と知識を兼ね備えた存在として書く必要があり、ゲームに対しての初心者や無知は、ヒロインに対して求めざるを得ません。読者目線の存在というわけで、スカイ・ワールドの場合はかすみがそれに当たりますね。厳格な家庭に育ち、友だちに誘われるまでゲームなどやったこともなかった箱入り娘。そんな彼女に、主人公であるジュンはあくまで上位者として、経験者として接していくわけです。これによって、パーティのバランスをとっているわけだ。
ヒロインはカスミということになっていますが、この作品は女性キャラクターが多く登場し、もっと言えば主人公以外は全員が女性ないし少女です。かすみと共にジュンの元へやってきた白魔術師のエリは、既にカスミと双璧をなすダブルヒロインとなりつつありますし、ジュンをスカイ・ワールドへと導いた謎の少女アリスは、どことなくジュンに対する執着心を見せています。そして、カスミの親友であるサクヤもまた……
富士見ファンタジアは基本的にシリーズ物しか出さないところですし、スカイ・ワールドも01と表記されているからには続刊が出るのでしょう。私としては、久々に読んでいて面白い、当たりのラノベだったので、これは普通に続きが読みたいと思ってます。ゲームだった頃の名残りや、システム面の描写が細かいせいか映像化には不向きなような気もしますけど、まずはしっかりと巻数を重ねて、もっと彼らの冒険の旅を見せて貰いたいですね。ところで、スカイ・ワールドは浮遊島が舞台であり、1巻は第八軌道の島がメインだったわけだけど、これって某魔神英雄伝ワタルみたいに一つずつ島を攻略し、上に登っていくシステムになるのかな。だとしたら、最低でも8巻は出ることになるけど、いやはやなんともはや、早く続きが読みたいよ。
コメント