王都炎上: アルスラーン戦記① (光文社文庫)
2012年6月26日 アニメ・マンガ
文庫の新装版が出ていたので散々読み倒した作品ながら、また読んでみることにしました。アルスラーン戦記は、銀河英雄伝説と並ぶ田中芳樹の傑作ファンタジー小説ですが、1986年に創刊して以降、未だに完結していないことでも知られています。今年で26年の月日が流れたわけで、そういや去年は25周年なのに、これと言ってなにもしませんでしたね。あるいは、私が気付いていないだけで、何かしたのかもしれないが……まあ、それはともかく、久しぶりに読んでみるとこれがもう面白くって。銀英伝とは毛色の違う楽しさがありました。
アルスラーン戦記は、現代で言うところのペルシャを舞台にしたファンタジー小説なんだけど、確か何年か前に田中芳樹の講演で聞いたところによると、最初はペルシャどころかファンタジーを書くというつもりもなかったらしい。というのも、アルスラーンは元々角川文庫で刊行されていた作品なんですが、角川から話が来た当初はSFで新作を書いて欲しいとのことで、まあ、26年前と言えば銀英伝が完結するかしないかって頃ですし、田中芳樹と言えばSF小説家というイメージもありましたからね。無理もないと思います。
けれど、田中芳樹自身はSFを書く気がさらさなかったようで、そういうことならばと席を立とうとしたそうなんですが、「それなら何が書きたいのですか?」と問われて考え込むことに。SFは書きたくなかったけど、じゃあ、何なら書きたいのか、という答えを持ち合わせていなかったそうで、そのとき出たのがファンタジーという単語。しかし、ファンタジーにも種類がありますし、舞台はヨーロッパか、それとも日本や中国なのかと尋ねられ、考え込んだと田中芳樹の口からこぼれ落ちたのが「ペルシャ辺りで……」答えだった。
ペルシャという地名を知らない人はそんなにいないと思いますが、じゃあ、現実としてどこにあるのかと言われると、パッと出てくる人は少ないでしょう。ましてや小説というお話しの舞台に、お世辞にもメジャーとは言えませんし、そうしたマイナーどころへの興味もあってか、話はとんとん拍子に進んだとかなんとか。
勿論、お話しとしてのアルスラーン戦記は架空の世界が舞台ですし、現実に置き換えるとペルシャになると言うだけです。大陸公路の覇者であるパルス国と、その国の王太子であるアルスラーンを主人公に、侵略者であるルシタニア国や、パルスを狙う周辺国との戦いの日々を描くというのが主な物語。銀英伝との違いはその戦闘描写にあって、SFではなくFTだけに、生身の人間の殺し合いが生々しく表現されていることです。銀英伝にも白兵戦を書いているシーンはいくつかありましたけど、個人的にはあれを超える凄惨さです。
なにせ、物語の序盤はパルス軍と侵略者ルシタニア軍の決戦から始まるのですが、主人公であるアルスラーンの母国であるにも関わらず、パルスは惨敗してしまいます。これはルシタニアが強いわけでも、パルスが弱いわけでもなく、そもそもパルス国は大陸公路の中心にあって、常に周辺を外的から狙われていました。しかし、強大な軍隊と、圧倒的な強さを誇る騎馬兵団によって何度となく外敵を退けており、大陸公路の覇者たる所以も、その軍事力の高さにあると言っても過言ではありません。
けれど、パルス軍がいつも通りの強さで侵略者を撃退しました、ではお話しが始まりませんし、ルシタニア軍はあの手この手を講じてパルス軍を翻弄し、パルスが誇る騎馬隊を火攻めで焼き払うという暴挙によって勝利をもぎ取りました。戦場の勇者として幾度となく敵を打ち破ってきた国王も、謎の銀仮面に捕らえられ、初陣であったアルスラーンは「戦士の中の戦士」であるダリューンに助けられて戦場を離脱します。パルス軍は壊滅し、王都が占領されるという最悪の状態が僅か一巻においてなされたわけで、アルスラーンは十騎にも満たない手勢に守られる、流浪の王子となったわけです。
その後、アルスラーンは王都を奪還し、パルス国に秩序を取り戻すため戦いを始めて行くわけですが、この作品はとにかく登場するキャラクターが素敵だと思う。一巻だけでもナルサス、エラム、ギーヴにファランギースといういったキャラが登場するわけだけど、敵味方含めて本当に魅力的な人物ばかりで。アルスラーンの王子として、いや、王としての成長や、彼と共に戦う仲間達の活躍。戦いの描写は少し凄惨すぎるとろこもありますが、ロマン溢れる戦記ファンタジーだと私は思います。新書版は角川文庫の2巻分を1冊にまとめていましたが、光文社文庫版はそれを更に1巻分に戻して刊行だから、まあ、第1部で12冊ぐらい出るのかな? 読みやすいし、折角だし買っていこうと思いますが、次はさていつ頃になるのかな。やっぱり、田中芳樹作品は面白い。
アルスラーン戦記は、現代で言うところのペルシャを舞台にしたファンタジー小説なんだけど、確か何年か前に田中芳樹の講演で聞いたところによると、最初はペルシャどころかファンタジーを書くというつもりもなかったらしい。というのも、アルスラーンは元々角川文庫で刊行されていた作品なんですが、角川から話が来た当初はSFで新作を書いて欲しいとのことで、まあ、26年前と言えば銀英伝が完結するかしないかって頃ですし、田中芳樹と言えばSF小説家というイメージもありましたからね。無理もないと思います。
けれど、田中芳樹自身はSFを書く気がさらさなかったようで、そういうことならばと席を立とうとしたそうなんですが、「それなら何が書きたいのですか?」と問われて考え込むことに。SFは書きたくなかったけど、じゃあ、何なら書きたいのか、という答えを持ち合わせていなかったそうで、そのとき出たのがファンタジーという単語。しかし、ファンタジーにも種類がありますし、舞台はヨーロッパか、それとも日本や中国なのかと尋ねられ、考え込んだと田中芳樹の口からこぼれ落ちたのが「ペルシャ辺りで……」答えだった。
ペルシャという地名を知らない人はそんなにいないと思いますが、じゃあ、現実としてどこにあるのかと言われると、パッと出てくる人は少ないでしょう。ましてや小説というお話しの舞台に、お世辞にもメジャーとは言えませんし、そうしたマイナーどころへの興味もあってか、話はとんとん拍子に進んだとかなんとか。
勿論、お話しとしてのアルスラーン戦記は架空の世界が舞台ですし、現実に置き換えるとペルシャになると言うだけです。大陸公路の覇者であるパルス国と、その国の王太子であるアルスラーンを主人公に、侵略者であるルシタニア国や、パルスを狙う周辺国との戦いの日々を描くというのが主な物語。銀英伝との違いはその戦闘描写にあって、SFではなくFTだけに、生身の人間の殺し合いが生々しく表現されていることです。銀英伝にも白兵戦を書いているシーンはいくつかありましたけど、個人的にはあれを超える凄惨さです。
なにせ、物語の序盤はパルス軍と侵略者ルシタニア軍の決戦から始まるのですが、主人公であるアルスラーンの母国であるにも関わらず、パルスは惨敗してしまいます。これはルシタニアが強いわけでも、パルスが弱いわけでもなく、そもそもパルス国は大陸公路の中心にあって、常に周辺を外的から狙われていました。しかし、強大な軍隊と、圧倒的な強さを誇る騎馬兵団によって何度となく外敵を退けており、大陸公路の覇者たる所以も、その軍事力の高さにあると言っても過言ではありません。
けれど、パルス軍がいつも通りの強さで侵略者を撃退しました、ではお話しが始まりませんし、ルシタニア軍はあの手この手を講じてパルス軍を翻弄し、パルスが誇る騎馬隊を火攻めで焼き払うという暴挙によって勝利をもぎ取りました。戦場の勇者として幾度となく敵を打ち破ってきた国王も、謎の銀仮面に捕らえられ、初陣であったアルスラーンは「戦士の中の戦士」であるダリューンに助けられて戦場を離脱します。パルス軍は壊滅し、王都が占領されるという最悪の状態が僅か一巻においてなされたわけで、アルスラーンは十騎にも満たない手勢に守られる、流浪の王子となったわけです。
その後、アルスラーンは王都を奪還し、パルス国に秩序を取り戻すため戦いを始めて行くわけですが、この作品はとにかく登場するキャラクターが素敵だと思う。一巻だけでもナルサス、エラム、ギーヴにファランギースといういったキャラが登場するわけだけど、敵味方含めて本当に魅力的な人物ばかりで。アルスラーンの王子として、いや、王としての成長や、彼と共に戦う仲間達の活躍。戦いの描写は少し凄惨すぎるとろこもありますが、ロマン溢れる戦記ファンタジーだと私は思います。新書版は角川文庫の2巻分を1冊にまとめていましたが、光文社文庫版はそれを更に1巻分に戻して刊行だから、まあ、第1部で12冊ぐらい出るのかな? 読みやすいし、折角だし買っていこうと思いますが、次はさていつ頃になるのかな。やっぱり、田中芳樹作品は面白い。
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