そらおとの最新刊をやっと買ったんですが、この作品もそろそろ終わりそうですね。20巻まで出れば切りが良いけど、後1,2巻ってところじゃないかな。少年エースの連載作品で、しかもオリジナルがこんなに長く続いているのは初めてのことだと思うけど、物語自体は確実に終盤へ差し掛かっており、展開も全体的に重苦しかったです。そらおとはコミカルなギャグコメディに時折シリアスな話が入る、という感じの構成だと思いますが、今回はシリアスな話の中に時折ギャグが挟まれる程度で、心が痛くなる気分を味わった。

ハーピーの自爆は想定の範囲内だったけど、シナプスの男って王様だったんですね。ミーノースという名前は、ゼウスの息子として知られるギリシャ神話の王がモデルでしょうね。神話の登場人物ですが、実在していたのではないかと言われる人で、その存在には謎が多いです。シナプスの王としては孤独な人らしく、ハーピーの手料理しか口にしなかったなど、意外な一面もあったらしい。
まあ、シナプス人は大半が眠りこけているわけですから、彼が孤独というのは分からない話でもない。だって、言ってしまえば民なき王なわけですから、あの快楽主義もダイブゲームに対する反発心だと思えば、少なからず納得いく気がする。眠り以外の快楽を追求することで、なんとか臣下や民の眠りを妨げようとしていたのかも知れないし。ハーピーがどこまでミーノースの真意や真相に気付いていたかは知らないけど、まあ、自作のエンジェロイドだったわけだし、ダイダロス製のニンフたちよりかは信頼されていたはずです。
ハーピーは智樹たちに心が大分傾いていましたが、結局は創造主であるミーノースのことを選んだ。でも、智樹たちにはそれが分からない。シナプスの王が彼女たちを自爆させた、あるいはそこまで追い込んだと思っている。だからこそ、彼を倒す為にシナプスへ乗り込むことを決めるのだけど……予想以上にミーノースは精神的打撃を受けていた。おそらく、彼の内心を理解する唯一の姉妹がいなくなったのだから、失ってみて分かる存在の大きさという奴でしょう。自棄を起こさないか心配ですが、まあ、最終決戦へと雪崩れ込むのでしょう。
面白かったのは鳳凰院義経で、文化祭の時だけ出てくるかと思った彼ですが、すっかり準レギュラーになってますね。金持ち繋がりということで、守形に関わりがあるのは盲点だった。しかしまあ、どら息子と言われながらもなかなかどうした、義侠心に篤い奴じゃないですか。

そはらの件は……まあ、予想通りとしか言い様がない。かつて、守形がニンフに自分は現実かと訊ねたとき、ニンフは「現実よ……アンタは」と言いました。これはつまり、守形以外の周囲の誰かは現実の存在じゃないということで、智樹やそはらにその可能性があったということです。勿論、ニンフはあくまで空見町ないし地球全体のことを指していったのかも知れないけど、風音の存在からも読者はそういった可能性があることを知ります。
そして、それは現実のもとなった。今のそはらが一体どういう存在なのかは分かりませんが、おそらく幼少期のそはらというのはイコールでダイダロスの地上における姿だったのでしょう。であれば、彼女が智樹のことをトモくんと呼ぶのも分かりますし、彼女の夢を見て智樹が毎回泣いてしまうのも分かる。幼少期のそはら=ダイダロスが死んだことで、地上における彼女の記憶が世界からリセットされてしまったと考えれば、智樹が存在を覚えていないことにも納得いくしね。
ただ、そうなると益々現実に存在するそはらの意味が分からない。ダイダロスが作ったエンジェロイドの一種なのか、あるいはアバターか。そはら自身、過去の記憶は持っているみたいですが、そこに穴があるらしいことは大体分かりました。風音が言っていた智樹の好きな相手というのは間違いなくそはらのことなんだろうけど、それだけに彼女の存在と正体が気になるところです。

さて、最後の最後に登場したカオスですが……風音は多分ダメでしょうね。食われるのは確定として、人格や記憶まで吸収してしまうというパターンじゃないだろうか。それでカオスが改心を果たすも、友達を殺されたニンフと戦闘に陥り、もう後戻りできないところにとか。シナプスへ行ってしまった義経の存在もあるし、次巻が待ち遠しい限りです。けどまあ、そらおとは刊行スペースが割と早いので、そんなに待つこともないとかと思いますが。
しかし、智樹の思い人がそはら、あるいはダイダロスだったとして、エンジェレイドは悲恋が確定しているのかしら。あくまで家族という意味では今のままでも十分かも知れないけど、アニメのあれも考えると、そらおとの世界は智樹にとって忘れられない思い出であって、未来永劫継続していくものじゃないんだよね。こすもすも終わったらしいし、一体どんなラストが待っているのやら。

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