魔女こいにっきの感想日記
2014年6月3日 アニメ・マンガ
楠原ゆい改め、くすはらゆいの主演作ということで購入しました。今年の私は、くすはらゆいが出演している作品以外でエロゲーはあまり買わないようにしようと決めたので、この作品は12の月のイヴに続く第2弾ということになるのかな。間に何かあったような気もしますけど、あぁ、Clover Daysか。何だかんだで売り出し中の人だから、色々な作品に出てるんだよね。把握しているだけでも、今後4~5本の出演が確定していたはずだし。いやはや、すっかり人気になってしまった。
まずはざっとプレイしてみたんですが、私はこの作品の体験版をやってません。そもそも余程の期待作か、興味はあるけど購入を決めかねているような作品でない限り、体験版ってあまりプレイしないんだよね。特に魔女こいの場合は、くすはらゆいの主演作だから必ず買うことが決定していたし、買うことを決めてる作品の体験版を、わざわざやる必要もないでしょ? 発売はまだか、待ちきれないぞ! と、体験版に手を出すこともなくはないけどさ。
だから、魔女こいにっきに関しては事前情報殆どなし、インストールしてゲームを立ち上げたのが作品に初めて触れた瞬間となりました。なにせ、ホームページのストーリー紹介や、キャラの紹介ページすらろくに確認してないもんだから、魔女こいがどういう話しであるのか、その概要やあらすじさえ、私の頭の中にはないんですよね。知っているのは、くすはらゆいが南乃ありすというヒロインを演じることと、ゆみどん……じゃない、山田ゆなが共演する、ということぐらいで。ほぼ、声優のことしか把握してませんね。
そんな前情報一切なしの状態でプレイを初めて、しょっぱなからヒロインであるありすが出てきたときは「へぇ」と思いました。ヒロイン視点から始めるなんて、導入部としては久しぶりかも知れないな、と感じまして。エロゲってのは大抵、主人公である少年ないし、男性のモノローグから始まるもので、自分の心情的なものを語り出したり、回想シーンが流れたりして、そこから幼馴染が起こしに来る、というのがある種のテンプレートでしょう。ヒロインの視点から始まる作品は、そのキャラが機械仕掛けの神でもない限り、そんなに多くはないと思います。
それでまあ、ありすの視点から話が始まっていくのですが……何かがおかしい。導入部を担当するにしてはあまりにも長く、自宅での朝の風景や、友人たちとの通学、学校での生活といったあれこれは、まさにありすの1日を描いているといっても差し支えはなく、メインヒロインの視点から始まったにしては、どこかずれている。てっきり、ありすが主人公と街角でぶつかるなりなんなり、とにかく出会うところで支店が切り替わるのかと思ったが、一向に主人公が出てこないのだ。
そして、ありすは物語の鍵となる日記を時計台で拾い、それを読み開いた。ここにきてやっと視点がありす以外の誰か、男のものへと切り替わるのだけど、その視点は永続的なものでも連続的なものでもなく、日記のページという制約が常に付いていた。魔術書の一種らしい日記は、一度に読めるページ数が決まっているようで、一区切りつくごとに、またありすの視点へと戻ってくる。基本的には、その繰り返しが話の序盤から中盤にかけてのメインになる。
二度ほど視点の切り替えを繰り返したとき、私は一つの事実に気付いた。あぁ、この作品の主人公は南乃ありすであって、日記に出てくる男ではないのだな、ということに。エロゲの主人公は大体が男であるという先入観に、私もいつの間にか囚われていたんですね。
無論、日記に出てくる男もまた主役には変わりないのだけど、彼は日記の中にこそ出てくるが現実には、ありすやその周囲の前に現れることがない。しかし、日記にはありすにとって身近な名前、学校の先生であったり、部活の先輩だったり、そんな人の名前が出てきて、内容もかなり克明だ。当然、興味を持って周囲にリサーチをかけるが、誰一人として彼の存在を知っている人はいなかった。故に彼は、この世界に存在しておらず、唯一日記の中にだけ登場する人物なのだ。少なくとも、この時点では。
ありすが主人公なのはいいとして、それでは日記に登場する男は何者なのでしょうか? 日記の中にだけ現れて、ありすの身近の女を手当たり次第に食い散らかすやりちん男という、およそ学園モノの主人公としては受け入れがたいクズの快楽主義者ですが、彼は決してありすの現実に姿を見せることはありません。
ありすはこのやりちん男に興味を持って、前述のように調べるのですが、日記に登場する女子たちは彼のことを知らないし、彼という存在の痕跡すら見つけられない。仮にやりちん男の妄想性生活日記なのだとして、内容はリアルすぎるし、書き手がいないというのはあまりにも不自然だ。
ここからはプレイヤーである私の推測になるが、このとき私は幾つかの過程を立てた。一つは日記がこれから起こる未来を書いたものであることを。未来を生きる彼によって書かれた日記が、何らかの事情で過去にいるありすの手元に落ちてきた。時計塔、という拾った場所柄的にも時間が関わっていそうなのは用意に予想が出来たし、可能性はありました。
次に考えたのが、日記の内容が平行世界の出来事を書いたということ。最近だと、所謂未来線とか呼ばれるものだけど、ありすのいる世界とは違う別世界に、彼女と同じような理容店に住んでいる少年がいて、その世界ではありすではなく少年が主人公なのだと、まあ、そんなところです。これもまた無理のない設定に思えたし、実はそれほど大ハズレではなかったんだけど、他にも不思議の国のアリスがごとく夢オチだとか、色々なことを想像した。
でも、一番ありそうだなと思ったのは、これが既に起こった過去を書いたものであり、ヒロインたちは彼を知らないのではなく、忘れているだけなのではないか? ということ。作中の季節が春で、進級したばかりの4月を舞台にしている時点で無理があるとは思ったんだけど、ぶっちゃけそんなものはリセットするか巻き戻すかすれば良いだけだしね。未来よりも過去、既にありすを始めとしたヒロインたちは主人公に会っている、と考えた方が話しとしては無難というか、分かりやすいかと思った。
そしてそれは、大筋においては当たっていた……
話の作りとしては一本道で、G線状の魔王や穢翼のユースティアに近いものがあるけど、この二作品が大樹の枝葉が分かれることによって個別ヒロインルートを確立し、それを無視して頂上を目指さない限り話の結末が見えてこないのに対して、魔女こいにっきは個別ヒロインの話をルート上の通過点として配置しています。個別の話に決着が付き、エンディング映像も用意はされているけど、そこで話が終わるわけじゃない。張り巡らされた伏線は徐々に回収されていき、ほぼ全ての事情を知る崑崙による謎解きと答え合わせが行われ……そうして解き明かされた真実に、ありすはどう向き合うのかと、まあ、そんな感じですか。
結論というか、大まかな感想を一言で書いてしまうと、この作品はアラビアのロレンスですね。初めてあの映画を観たときと同じ印象を受けましたし、序盤からラストにかけての伏線の張り方と回収の仕方、砂漠の国が出てくるところなどは、内容が戦争ものではないにしてもそのまんま過ぎる気がします。
話の内容がどうこうというよりは、手法や構成といった技巧的な部分が目を見張る作品でしたが、それを持って面白かった、と断言するのはどうなのだろうかと、私の中で少なからず迷いがあります。自分にとってこの作品が楽しかったのかどうか、それを決めるにはもう一周ぐらいしたほうが良さそうです。
ただ、今の時点でこれだけはハッキリ言える事があるんですが……崑崙ちゃんマジで可愛いなぁ! 特典付き買えばよかったよということですかね。
兎にも角にも技巧的に優れ、読み応えのある作品には違いないので、やりちん男等のキャラクターに対する好悪はあるかもしれませんが、結構オススメできるタイトルです。
まずはざっとプレイしてみたんですが、私はこの作品の体験版をやってません。そもそも余程の期待作か、興味はあるけど購入を決めかねているような作品でない限り、体験版ってあまりプレイしないんだよね。特に魔女こいの場合は、くすはらゆいの主演作だから必ず買うことが決定していたし、買うことを決めてる作品の体験版を、わざわざやる必要もないでしょ? 発売はまだか、待ちきれないぞ! と、体験版に手を出すこともなくはないけどさ。
だから、魔女こいにっきに関しては事前情報殆どなし、インストールしてゲームを立ち上げたのが作品に初めて触れた瞬間となりました。なにせ、ホームページのストーリー紹介や、キャラの紹介ページすらろくに確認してないもんだから、魔女こいがどういう話しであるのか、その概要やあらすじさえ、私の頭の中にはないんですよね。知っているのは、くすはらゆいが南乃ありすというヒロインを演じることと、ゆみどん……じゃない、山田ゆなが共演する、ということぐらいで。ほぼ、声優のことしか把握してませんね。
そんな前情報一切なしの状態でプレイを初めて、しょっぱなからヒロインであるありすが出てきたときは「へぇ」と思いました。ヒロイン視点から始めるなんて、導入部としては久しぶりかも知れないな、と感じまして。エロゲってのは大抵、主人公である少年ないし、男性のモノローグから始まるもので、自分の心情的なものを語り出したり、回想シーンが流れたりして、そこから幼馴染が起こしに来る、というのがある種のテンプレートでしょう。ヒロインの視点から始まる作品は、そのキャラが機械仕掛けの神でもない限り、そんなに多くはないと思います。
それでまあ、ありすの視点から話が始まっていくのですが……何かがおかしい。導入部を担当するにしてはあまりにも長く、自宅での朝の風景や、友人たちとの通学、学校での生活といったあれこれは、まさにありすの1日を描いているといっても差し支えはなく、メインヒロインの視点から始まったにしては、どこかずれている。てっきり、ありすが主人公と街角でぶつかるなりなんなり、とにかく出会うところで支店が切り替わるのかと思ったが、一向に主人公が出てこないのだ。
そして、ありすは物語の鍵となる日記を時計台で拾い、それを読み開いた。ここにきてやっと視点がありす以外の誰か、男のものへと切り替わるのだけど、その視点は永続的なものでも連続的なものでもなく、日記のページという制約が常に付いていた。魔術書の一種らしい日記は、一度に読めるページ数が決まっているようで、一区切りつくごとに、またありすの視点へと戻ってくる。基本的には、その繰り返しが話の序盤から中盤にかけてのメインになる。
二度ほど視点の切り替えを繰り返したとき、私は一つの事実に気付いた。あぁ、この作品の主人公は南乃ありすであって、日記に出てくる男ではないのだな、ということに。エロゲの主人公は大体が男であるという先入観に、私もいつの間にか囚われていたんですね。
無論、日記に出てくる男もまた主役には変わりないのだけど、彼は日記の中にこそ出てくるが現実には、ありすやその周囲の前に現れることがない。しかし、日記にはありすにとって身近な名前、学校の先生であったり、部活の先輩だったり、そんな人の名前が出てきて、内容もかなり克明だ。当然、興味を持って周囲にリサーチをかけるが、誰一人として彼の存在を知っている人はいなかった。故に彼は、この世界に存在しておらず、唯一日記の中にだけ登場する人物なのだ。少なくとも、この時点では。
ありすが主人公なのはいいとして、それでは日記に登場する男は何者なのでしょうか? 日記の中にだけ現れて、ありすの身近の女を手当たり次第に食い散らかすやりちん男という、およそ学園モノの主人公としては受け入れがたいクズの快楽主義者ですが、彼は決してありすの現実に姿を見せることはありません。
ありすはこのやりちん男に興味を持って、前述のように調べるのですが、日記に登場する女子たちは彼のことを知らないし、彼という存在の痕跡すら見つけられない。仮にやりちん男の妄想性生活日記なのだとして、内容はリアルすぎるし、書き手がいないというのはあまりにも不自然だ。
ここからはプレイヤーである私の推測になるが、このとき私は幾つかの過程を立てた。一つは日記がこれから起こる未来を書いたものであることを。未来を生きる彼によって書かれた日記が、何らかの事情で過去にいるありすの手元に落ちてきた。時計塔、という拾った場所柄的にも時間が関わっていそうなのは用意に予想が出来たし、可能性はありました。
次に考えたのが、日記の内容が平行世界の出来事を書いたということ。最近だと、所謂未来線とか呼ばれるものだけど、ありすのいる世界とは違う別世界に、彼女と同じような理容店に住んでいる少年がいて、その世界ではありすではなく少年が主人公なのだと、まあ、そんなところです。これもまた無理のない設定に思えたし、実はそれほど大ハズレではなかったんだけど、他にも不思議の国のアリスがごとく夢オチだとか、色々なことを想像した。
でも、一番ありそうだなと思ったのは、これが既に起こった過去を書いたものであり、ヒロインたちは彼を知らないのではなく、忘れているだけなのではないか? ということ。作中の季節が春で、進級したばかりの4月を舞台にしている時点で無理があるとは思ったんだけど、ぶっちゃけそんなものはリセットするか巻き戻すかすれば良いだけだしね。未来よりも過去、既にありすを始めとしたヒロインたちは主人公に会っている、と考えた方が話しとしては無難というか、分かりやすいかと思った。
そしてそれは、大筋においては当たっていた……
話の作りとしては一本道で、G線状の魔王や穢翼のユースティアに近いものがあるけど、この二作品が大樹の枝葉が分かれることによって個別ヒロインルートを確立し、それを無視して頂上を目指さない限り話の結末が見えてこないのに対して、魔女こいにっきは個別ヒロインの話をルート上の通過点として配置しています。個別の話に決着が付き、エンディング映像も用意はされているけど、そこで話が終わるわけじゃない。張り巡らされた伏線は徐々に回収されていき、ほぼ全ての事情を知る崑崙による謎解きと答え合わせが行われ……そうして解き明かされた真実に、ありすはどう向き合うのかと、まあ、そんな感じですか。
結論というか、大まかな感想を一言で書いてしまうと、この作品はアラビアのロレンスですね。初めてあの映画を観たときと同じ印象を受けましたし、序盤からラストにかけての伏線の張り方と回収の仕方、砂漠の国が出てくるところなどは、内容が戦争ものではないにしてもそのまんま過ぎる気がします。
話の内容がどうこうというよりは、手法や構成といった技巧的な部分が目を見張る作品でしたが、それを持って面白かった、と断言するのはどうなのだろうかと、私の中で少なからず迷いがあります。自分にとってこの作品が楽しかったのかどうか、それを決めるにはもう一周ぐらいしたほうが良さそうです。
ただ、今の時点でこれだけはハッキリ言える事があるんですが……崑崙ちゃんマジで可愛いなぁ! 特典付き買えばよかったよということですかね。
兎にも角にも技巧的に優れ、読み応えのある作品には違いないので、やりちん男等のキャラクターに対する好悪はあるかもしれませんが、結構オススメできるタイトルです。
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