失われた未来を求めて第13話「失われた夏休みを求めて」 感想
2015年8月28日 アニメ・マンガ
われめてこと、失われた未来を求めての全巻購入有償特典Blu-rayDISCが本日届きました。所謂、TV未放送話という奴ですが、われめての場合は最終巻に収録とかではなく、BDを全巻購入した上で、定額小為替を同封しての有償申込という形式を取っており、定額小為替とかいつの時代の同人誌通販だよ! と、思った記憶があります。
最終巻が発売されたのは5月末、申込締切は6月下旬だったはずだから、約2ヵ月後の到着になりますけど、推定されるBDの売り上げ枚数から考えると、やや遅くなったかな? 公式も7月の中旬に、ツイッターで発送の遅れを詫びてましたし。
あるいは9月到着などの延期もあり得ると覚悟してたんだけど、昨日でしたか、ヤマト運輸から荷物お届けのメールが来ましてね。ヤマトのメンバーに登録していたから良かったようなものの、公式サイトもツイッターも一切告知なしですから、中には突然届いたという人もいたんじゃないでしょうか? 宅急便の品名はシンプルに作品名が書かれており、まあ、宅配テロと言うほどではなかったにせよ、この辺り、キングは少し適当ですね。
特典の仕様としてもこれといって際だった部分はなく、流石に本編のBDと同じくデジパックやスリーブケースというわけではなかったし、最近よくある、漫画やラノベといった書籍にBDが同梱される際に使われる、ありふれた白ケースでした。もっとも、これに関しては紙ジャケットという可能性や、BDに不向きな不織布ケースなんてこともあり得ただけに、むしろ、2200円のクオリティとしてはちゃんとしてくれた方なのかなと思います。
パッケージ自体は作品のキービジュアルとを使用しており、特典の内容に沿ったキャッチーな描き下ろしとかではないものの、まあ、許容範囲内かなと。勿論、個人的な希望をいえば描き下ろしが良かったし、この作品は結構オーディオコメンタリーが面白かったので、そういうのも欲しかったけど……あまり多くを望んでも仕方ないでしょう。
それに、想像していたよりも特典の内容が、これまで書いたとおり仕様という意味ではありませんが、未放送話の新作アニメとしては、かなり出来が良かったので、私自身が好意的になっているのかも知れません。
特典の内容は前述のオーディオコメンタリーなどでも少し触れられていましたが、キャッキャウフフな話と聞いていたから、本編では出来なかったサービス回が来るものだと思っていました。近年のアニメにおけるサービス回とは、ヒロインたちが海やプールで水着姿になったり、温泉などに全裸で……温泉なんだから裸になるのは当たり前ですが、とにかく入浴シーンなどを披露する、主に男性視聴者に対して昔ながらのエロを提供する話です。
まあ、喜ぶのが男性だけとは限らないけど、そういう事例については置いといて、この失われた未来を求めては、所謂エロゲを原作とするアニメでありながら、本編中にそういったサービスシーンが殆どないんですよね。一度だけ、ゆいと凪沙先輩が風呂に入りましたけど、まあ、それぐらいでしょうか。本編のメインストーリーが濃くて、内容がギッシリしてるのと、原作の時期が文化祭の開催される秋口で、海やプールにいったりするイベントがなかった、というのも大きいのかな?
元々、エロゲ原作だからエロが多いのかと言えば、そんなことは全然なくて、ヨスガノソラがアニメで改悪されたから誤解されがちだけど、TVアニメ化するようなエロゲ作品は、拘りがあるかないかはともかく、そこまでエロを重視した作品でもないんですよ。まあ、われめてとヨスガは製作も制作も同じ会社なんですけどね。
だから、この手の特典アニメで、本編において不足していたエロ成分を補うというのはよくある話で、われめてと同時期に放送されていたグリザイアなどは、あからさまなエロを前面に押し出したショートアニメが円盤の特典に付いてたりしますから、手法、あるいは商法としては極めて典型的な、テンプレートみたいなものなのでしょう。それを否定するつもりはないし、私にしたところで、今回の特典にそういうのを期待していた一面はあったから、13話のタイトルが「失われた夏休みを求めて」だったときは、やはり来たか、という気分になりました。
さて、第13話「失われた夏休みを求めて」なのですが……いや、エロかったですよ。ヒロインたちによる脱衣所での脱衣シーンから始まり、温泉に入浴、翌日は海に水着と、これでもかというぐらい前半に詰め込んできました。
私が非常に感心したのは、エロいこと以上に、そのエロの魅せ方でした。こういうアニメのサービス回だと、作り手はとかく勘違いしがちというか、とりあえず乳首と裸を出しておけばいいみたいな風潮があって、やれ乳首券が発行されたとか、湯気や光が消えたとか、そんな話ばっかりですよね? まあ、それは本編映像の修正ですし、われめてにもありましたけど、新規の映像特典だと、主人公とエロいことをしていればいい、ラッキースケベを超えた絡みを見せておけば……というのが非常に多くて。私はそれを安易だと思ってるし、エロってそんな単純かな? と、考えてもいたわけです。
われめてが優れていたのは、そんなエロに対するテンプレートを踏襲するわけでもなく、如何にヒロインたちをエロく魅せるかに拘っている点が、強く伝わってきたからです。主人公とのエロハプニングシーンや、もっといえば実際に致しちゃうようなこともせず、入浴時や水着姿におけるアングルですとか、どう描けばヒロインたちはエロく映るのかという、角度への挑戦があったように思う。ロリ巨乳をお持ちの凪沙先輩が主な対象だったけど、いや、水着の際どさもさることながら、凪沙先輩の角度エロは本当に見事だった。脱いでる入浴シーンよりも断然にエロいってのが、本当に素晴らしい。だって、特に主人公と絡んでエロいことしてるわけでもないんですよ? 浜辺で寝てたり、ゆいと話したりしてるシーンだけで、あそこまで凪沙先輩のエロスを醸し出せるとか、はいはい、乳首券嬉しいねーとか擦れていた私には、結構な衝撃でした。
そして何より、こうしたサービス回はあくまで物語の前半であって、本編あるいは本題ともいうべき話は、ちゃんと別個に用意されていました。てっきり、主人公の奏がひたすらヒロインたちにとイチャイチャエロエロするようなものを予想していた身としては、良い意味で裏切られたというか、期待していた以上ものがやってきた感じでした。
勿論、本編や原作には海へ行くようなエピソードはないわけですから、完全オリジナルなんですけど、これが大変丁寧に作られていて、エロければいいんでしょ、みたいな適当さが全く感じられなかったのが凄く嬉しいんです。だって、話に中身があったんだもの。
先に設定の方を書いておくべきでしたが、上記した通り、われめての舞台というか季節は、アニメ本編や原作だと文化祭の開催される秋口で、海に行くような季節じゃないんですが、13話だと、ゆいがAIユニットに触れて記憶を取り戻した時点で、何故か7月13日と夏休み直前になっており、彼女が本来現れなければ行けない時間軸から、3ヵ月以上もズレが存在します。当然これは海に行くためのオリジナル展開ですが、ゆいは真面目だから、この大幅にずれた時間軸で、自分はどうすれば良いのか悩むんだけど、別に何故ゆいは7月に来てしまったのか? とか、そういう謎を解明する話ではありません。むしろ、ゆいは周囲の勧めというか、流れもあって、自分が経験したことがない夏休みというものを満喫してみようと思い、そこから海で遊んだりに繋がっていく訳です。
天文学会の合宿……といっても、彼らの中でまともに星を観たりするのは奏だけですから、殆ど旅行なのですけど、その名目で凪沙先輩というか、華宮家が所有する別荘を訪れる一行。別荘とはいうものの、元々は凪沙先輩の曾祖母が住んでいたところで、別荘というには立派すぎる、大邸宅やお屋敷の部類に入ります。モデルはおそらく、東京都の旧古河庭園。古河財閥の3代目当主で、男爵だった方の邸宅ですね。今は国有財産として、都立公園になっているはず。古川ゆいと名前を引っかけたのだろうか。
凪沙先輩の曾祖母は原作にも登場しないオリジナルの設定になるわけですが、彼女は華宮研究所の創設者で、当時としては珍しい女性の研究者だったと回想されていました。別荘の近くには軍事工場があり、大日本帝国軍向けの技術開発が行われていたようです。近代の華宮家は女流の家系だったようで、案外、凪沙先輩の許嫁云々も入り婿なのかも知れませんね。別荘に飾ってあった軍刀を観る限り、曾祖父は軍人だったようですが、果たして……
海を満喫する天文学会一行ですが、そこに生憎の雨が降ってきて、雨宿りとして件の軍事工場へと避難します。ここからが後半というか、この話のメインストーリーになるわけです。冒険心から工場内を探検していると地下への入口を発見、侵入するのだけど……戦時中の軍事工場で、地下室ならぬ広大な地下フロアとか、もう、人体実験の一つも行われてたって不思議じゃないですよね。
実際、この地下部分が何をするものだったのかは明かされてませんが、愛理はその深さから防空壕だったのではないかと推察してますし、広さは某総統地下壕か、それ以上はあるでしょう。しかも、まだ電気が通っている。
多分、地上が軍事工場ということから考えるに、地上部分が空爆なりで吹っ飛ばされた場合でも、研究が続けられるよう二重構造の施設にしていた、というのが正解なのではないでしょうか? あるいは地上施設を建造や製造に当てて、地下は研究と開発に使っていたとかね。妄想は広がるけど、明確な答えを出さないまま、奏やゆいたちは施設内を見て回ります。
牢屋のような鉄格子の部屋もあれば、医務室のような部屋もあって、御手洗いの蛇口は水が滴ってたけど、何十年も放置されていた施設にしては不可解ですよね。電気が通っていたり、水道があることは良いのだけど、電球が切れていないのは不自然だし、捻ってもいない蛇口から水が滴るのはおかしいです。奏たちはそれほど深く考えてなかったけど、実はこれにも理由があったのだと、後々になって分かる。そういう、一つ一つの描写が細かくて、ちゃんと話と映像が作り込まれているんだよね。
施設内を見て回る最中、奏たちは自分たち以外の人影を、幻影と表記してもいいものを視線の端に捉えたり、佳織に至ってはマジマジと見てしまう。幽霊かと騒ぐ一行なのだけど、ゆいだけは一つの確信があって……彼女は遂に幽霊の正体を突き止める。
前半のキャッキャウフフなサービス回から、よくもまあ、ここまでホラーとSFを意識した展開に持って行けるものだけど感心しました。話として物凄く面白いし、作りが非常に丁寧で。われめては本編が複雑なSFだけど、それに対して違和感のない、本編や原作と並べても遜色ない物語を作ってきたのはかなり評価できると思います。
幽霊の正体は本編にも原作にも登場しないオリジナルキャラクターになるわけですが、ゆいと彼女の出会いや会話にも良かったし、出会いと邂逅に対する意味の持たせ方も、非常に好きな流れだった。
更に、ラストシーンを未来組が締めるってのもにくい演出でしたよ。序盤だけど花梨も登場したし、出てなかったのは佳織ママンの詩織さんぐらいか。パケ裏にはクレジットされてたんだけどね。
AIユニットは意外なほど長い歴史を持つものだということも判明して、それこそ数百年単位の歴史があってもおかしくはないみたいだけど、ゆいの言っていたとおりオーパーツとして解明には今後も長い年月を有するのでしょう。本編で、最初のゆいを作ったのは詩織さんだと言われていて、AIユニットから作り上げたのではないかと奏は推測していたけど、じゃあ、そのAIユニットはどこから来たのか? 誰が作ったのか、という話には踏み込んでなかったからね。華宮家に先祖代々伝わる宇宙人の秘密道具ぐらいに考えていた方が、夢があるのかも知れません。
そういえば、合宿のお目付役、あるいは保護者役として華宮家の執事、本城作之進が同行していましたね。凪沙の曾祖母について語ってましたけど、彼が曾祖母と同世代ってのはあり得ないし、戦前又は戦時中の生まれだとも思えないけど、華宮家の曾祖母が凪沙の生まれた少し後まで存命だったことを考えれば、面識があっても何ら不思議ではない。年齢から言って、凪沙の祖父世代、父祖の代から使えている人だろうからね。
元より好きな作品で、楽しみにしていたとは言え、ここまで大満足できる内容だとは思ってなかったから、今はとても気分が良いです。好きな作品を好きだと言えることは、本当に嬉しいものだよね。
そういえば、同封の用紙にBD全巻購入のお礼と特典申込のお礼、それから得点層藤木の贈れに対するお詫び状みたいのが入ってたけど、締めの文章が今後とも、「失われた未来を求めて」の応援をどうぞよろしくお願い致しますになっていて、思わず、「え、これ以上なにか展開あるの?」とか考えちゃいました。勿論、定型文だというのは分かってますが、好きな作品ですから、ムック本の一つでも出ればそれだけで嬉しいし、続編や2期はないだろうけど、なにかしらの形で続いてくれたら良いなと、そんな希望を抱きました。
私はやっぱり、何だかんだでスタチャっ子なのかな。逃げられないものです。
最終巻が発売されたのは5月末、申込締切は6月下旬だったはずだから、約2ヵ月後の到着になりますけど、推定されるBDの売り上げ枚数から考えると、やや遅くなったかな? 公式も7月の中旬に、ツイッターで発送の遅れを詫びてましたし。
あるいは9月到着などの延期もあり得ると覚悟してたんだけど、昨日でしたか、ヤマト運輸から荷物お届けのメールが来ましてね。ヤマトのメンバーに登録していたから良かったようなものの、公式サイトもツイッターも一切告知なしですから、中には突然届いたという人もいたんじゃないでしょうか? 宅急便の品名はシンプルに作品名が書かれており、まあ、宅配テロと言うほどではなかったにせよ、この辺り、キングは少し適当ですね。
特典の仕様としてもこれといって際だった部分はなく、流石に本編のBDと同じくデジパックやスリーブケースというわけではなかったし、最近よくある、漫画やラノベといった書籍にBDが同梱される際に使われる、ありふれた白ケースでした。もっとも、これに関しては紙ジャケットという可能性や、BDに不向きな不織布ケースなんてこともあり得ただけに、むしろ、2200円のクオリティとしてはちゃんとしてくれた方なのかなと思います。
パッケージ自体は作品のキービジュアルとを使用しており、特典の内容に沿ったキャッチーな描き下ろしとかではないものの、まあ、許容範囲内かなと。勿論、個人的な希望をいえば描き下ろしが良かったし、この作品は結構オーディオコメンタリーが面白かったので、そういうのも欲しかったけど……あまり多くを望んでも仕方ないでしょう。
それに、想像していたよりも特典の内容が、これまで書いたとおり仕様という意味ではありませんが、未放送話の新作アニメとしては、かなり出来が良かったので、私自身が好意的になっているのかも知れません。
特典の内容は前述のオーディオコメンタリーなどでも少し触れられていましたが、キャッキャウフフな話と聞いていたから、本編では出来なかったサービス回が来るものだと思っていました。近年のアニメにおけるサービス回とは、ヒロインたちが海やプールで水着姿になったり、温泉などに全裸で……温泉なんだから裸になるのは当たり前ですが、とにかく入浴シーンなどを披露する、主に男性視聴者に対して昔ながらのエロを提供する話です。
まあ、喜ぶのが男性だけとは限らないけど、そういう事例については置いといて、この失われた未来を求めては、所謂エロゲを原作とするアニメでありながら、本編中にそういったサービスシーンが殆どないんですよね。一度だけ、ゆいと凪沙先輩が風呂に入りましたけど、まあ、それぐらいでしょうか。本編のメインストーリーが濃くて、内容がギッシリしてるのと、原作の時期が文化祭の開催される秋口で、海やプールにいったりするイベントがなかった、というのも大きいのかな?
元々、エロゲ原作だからエロが多いのかと言えば、そんなことは全然なくて、ヨスガノソラがアニメで改悪されたから誤解されがちだけど、TVアニメ化するようなエロゲ作品は、拘りがあるかないかはともかく、そこまでエロを重視した作品でもないんですよ。まあ、われめてとヨスガは製作も制作も同じ会社なんですけどね。
だから、この手の特典アニメで、本編において不足していたエロ成分を補うというのはよくある話で、われめてと同時期に放送されていたグリザイアなどは、あからさまなエロを前面に押し出したショートアニメが円盤の特典に付いてたりしますから、手法、あるいは商法としては極めて典型的な、テンプレートみたいなものなのでしょう。それを否定するつもりはないし、私にしたところで、今回の特典にそういうのを期待していた一面はあったから、13話のタイトルが「失われた夏休みを求めて」だったときは、やはり来たか、という気分になりました。
さて、第13話「失われた夏休みを求めて」なのですが……いや、エロかったですよ。ヒロインたちによる脱衣所での脱衣シーンから始まり、温泉に入浴、翌日は海に水着と、これでもかというぐらい前半に詰め込んできました。
私が非常に感心したのは、エロいこと以上に、そのエロの魅せ方でした。こういうアニメのサービス回だと、作り手はとかく勘違いしがちというか、とりあえず乳首と裸を出しておけばいいみたいな風潮があって、やれ乳首券が発行されたとか、湯気や光が消えたとか、そんな話ばっかりですよね? まあ、それは本編映像の修正ですし、われめてにもありましたけど、新規の映像特典だと、主人公とエロいことをしていればいい、ラッキースケベを超えた絡みを見せておけば……というのが非常に多くて。私はそれを安易だと思ってるし、エロってそんな単純かな? と、考えてもいたわけです。
われめてが優れていたのは、そんなエロに対するテンプレートを踏襲するわけでもなく、如何にヒロインたちをエロく魅せるかに拘っている点が、強く伝わってきたからです。主人公とのエロハプニングシーンや、もっといえば実際に致しちゃうようなこともせず、入浴時や水着姿におけるアングルですとか、どう描けばヒロインたちはエロく映るのかという、角度への挑戦があったように思う。ロリ巨乳をお持ちの凪沙先輩が主な対象だったけど、いや、水着の際どさもさることながら、凪沙先輩の角度エロは本当に見事だった。脱いでる入浴シーンよりも断然にエロいってのが、本当に素晴らしい。だって、特に主人公と絡んでエロいことしてるわけでもないんですよ? 浜辺で寝てたり、ゆいと話したりしてるシーンだけで、あそこまで凪沙先輩のエロスを醸し出せるとか、はいはい、乳首券嬉しいねーとか擦れていた私には、結構な衝撃でした。
そして何より、こうしたサービス回はあくまで物語の前半であって、本編あるいは本題ともいうべき話は、ちゃんと別個に用意されていました。てっきり、主人公の奏がひたすらヒロインたちにとイチャイチャエロエロするようなものを予想していた身としては、良い意味で裏切られたというか、期待していた以上ものがやってきた感じでした。
勿論、本編や原作には海へ行くようなエピソードはないわけですから、完全オリジナルなんですけど、これが大変丁寧に作られていて、エロければいいんでしょ、みたいな適当さが全く感じられなかったのが凄く嬉しいんです。だって、話に中身があったんだもの。
先に設定の方を書いておくべきでしたが、上記した通り、われめての舞台というか季節は、アニメ本編や原作だと文化祭の開催される秋口で、海に行くような季節じゃないんですが、13話だと、ゆいがAIユニットに触れて記憶を取り戻した時点で、何故か7月13日と夏休み直前になっており、彼女が本来現れなければ行けない時間軸から、3ヵ月以上もズレが存在します。当然これは海に行くためのオリジナル展開ですが、ゆいは真面目だから、この大幅にずれた時間軸で、自分はどうすれば良いのか悩むんだけど、別に何故ゆいは7月に来てしまったのか? とか、そういう謎を解明する話ではありません。むしろ、ゆいは周囲の勧めというか、流れもあって、自分が経験したことがない夏休みというものを満喫してみようと思い、そこから海で遊んだりに繋がっていく訳です。
天文学会の合宿……といっても、彼らの中でまともに星を観たりするのは奏だけですから、殆ど旅行なのですけど、その名目で凪沙先輩というか、華宮家が所有する別荘を訪れる一行。別荘とはいうものの、元々は凪沙先輩の曾祖母が住んでいたところで、別荘というには立派すぎる、大邸宅やお屋敷の部類に入ります。モデルはおそらく、東京都の旧古河庭園。古河財閥の3代目当主で、男爵だった方の邸宅ですね。今は国有財産として、都立公園になっているはず。古川ゆいと名前を引っかけたのだろうか。
凪沙先輩の曾祖母は原作にも登場しないオリジナルの設定になるわけですが、彼女は華宮研究所の創設者で、当時としては珍しい女性の研究者だったと回想されていました。別荘の近くには軍事工場があり、大日本帝国軍向けの技術開発が行われていたようです。近代の華宮家は女流の家系だったようで、案外、凪沙先輩の許嫁云々も入り婿なのかも知れませんね。別荘に飾ってあった軍刀を観る限り、曾祖父は軍人だったようですが、果たして……
海を満喫する天文学会一行ですが、そこに生憎の雨が降ってきて、雨宿りとして件の軍事工場へと避難します。ここからが後半というか、この話のメインストーリーになるわけです。冒険心から工場内を探検していると地下への入口を発見、侵入するのだけど……戦時中の軍事工場で、地下室ならぬ広大な地下フロアとか、もう、人体実験の一つも行われてたって不思議じゃないですよね。
実際、この地下部分が何をするものだったのかは明かされてませんが、愛理はその深さから防空壕だったのではないかと推察してますし、広さは某総統地下壕か、それ以上はあるでしょう。しかも、まだ電気が通っている。
多分、地上が軍事工場ということから考えるに、地上部分が空爆なりで吹っ飛ばされた場合でも、研究が続けられるよう二重構造の施設にしていた、というのが正解なのではないでしょうか? あるいは地上施設を建造や製造に当てて、地下は研究と開発に使っていたとかね。妄想は広がるけど、明確な答えを出さないまま、奏やゆいたちは施設内を見て回ります。
牢屋のような鉄格子の部屋もあれば、医務室のような部屋もあって、御手洗いの蛇口は水が滴ってたけど、何十年も放置されていた施設にしては不可解ですよね。電気が通っていたり、水道があることは良いのだけど、電球が切れていないのは不自然だし、捻ってもいない蛇口から水が滴るのはおかしいです。奏たちはそれほど深く考えてなかったけど、実はこれにも理由があったのだと、後々になって分かる。そういう、一つ一つの描写が細かくて、ちゃんと話と映像が作り込まれているんだよね。
施設内を見て回る最中、奏たちは自分たち以外の人影を、幻影と表記してもいいものを視線の端に捉えたり、佳織に至ってはマジマジと見てしまう。幽霊かと騒ぐ一行なのだけど、ゆいだけは一つの確信があって……彼女は遂に幽霊の正体を突き止める。
前半のキャッキャウフフなサービス回から、よくもまあ、ここまでホラーとSFを意識した展開に持って行けるものだけど感心しました。話として物凄く面白いし、作りが非常に丁寧で。われめては本編が複雑なSFだけど、それに対して違和感のない、本編や原作と並べても遜色ない物語を作ってきたのはかなり評価できると思います。
幽霊の正体は本編にも原作にも登場しないオリジナルキャラクターになるわけですが、ゆいと彼女の出会いや会話にも良かったし、出会いと邂逅に対する意味の持たせ方も、非常に好きな流れだった。
更に、ラストシーンを未来組が締めるってのもにくい演出でしたよ。序盤だけど花梨も登場したし、出てなかったのは佳織ママンの詩織さんぐらいか。パケ裏にはクレジットされてたんだけどね。
AIユニットは意外なほど長い歴史を持つものだということも判明して、それこそ数百年単位の歴史があってもおかしくはないみたいだけど、ゆいの言っていたとおりオーパーツとして解明には今後も長い年月を有するのでしょう。本編で、最初のゆいを作ったのは詩織さんだと言われていて、AIユニットから作り上げたのではないかと奏は推測していたけど、じゃあ、そのAIユニットはどこから来たのか? 誰が作ったのか、という話には踏み込んでなかったからね。華宮家に先祖代々伝わる宇宙人の秘密道具ぐらいに考えていた方が、夢があるのかも知れません。
そういえば、合宿のお目付役、あるいは保護者役として華宮家の執事、本城作之進が同行していましたね。凪沙の曾祖母について語ってましたけど、彼が曾祖母と同世代ってのはあり得ないし、戦前又は戦時中の生まれだとも思えないけど、華宮家の曾祖母が凪沙の生まれた少し後まで存命だったことを考えれば、面識があっても何ら不思議ではない。年齢から言って、凪沙の祖父世代、父祖の代から使えている人だろうからね。
元より好きな作品で、楽しみにしていたとは言え、ここまで大満足できる内容だとは思ってなかったから、今はとても気分が良いです。好きな作品を好きだと言えることは、本当に嬉しいものだよね。
そういえば、同封の用紙にBD全巻購入のお礼と特典申込のお礼、それから得点層藤木の贈れに対するお詫び状みたいのが入ってたけど、締めの文章が今後とも、「失われた未来を求めて」の応援をどうぞよろしくお願い致しますになっていて、思わず、「え、これ以上なにか展開あるの?」とか考えちゃいました。勿論、定型文だというのは分かってますが、好きな作品ですから、ムック本の一つでも出ればそれだけで嬉しいし、続編や2期はないだろうけど、なにかしらの形で続いてくれたら良いなと、そんな希望を抱きました。
私はやっぱり、何だかんだでスタチャっ子なのかな。逃げられないものです。
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