失われた未来を求めての13話を繰り返し視聴していた気付いたのだけど、アニメ本編や原作と比較しても違和感ない、つまり、影響がないと思われたこの話、実は大きな見落としというか、可能性が存在するかもしれない。というのも、13話の時間軸におけるゆいは佳織を助けることが出来るのではないか? という疑問に行き当たったのです。一見すると、本編には全く関係ないエピソードだけど、そこに一つの盲点というか、落とし穴というか、逆転のウルトラCに繋がるのではないかと。

どういう事なのか説明していくと、まず、失われた未来を求めての本編におけるゆいの設定と目的、そしてヒロインである佳織の因果と宿命について書く必要がありますね。
先に佳織の話になりますが、彼女は内浜学園に通っていた学生時代、不慮の事故によって植物人間状態となり、目覚めぬままに十数年、あるいは数十年の時を過ごします。そんな佳織を目覚めさせるため、主人公の奏を始めとした友人たちは医学に科学に奔走し、佳織のクローン体から作った少女、古川ゆいを過去に送るのです。
佳織のクローン体は元々自分たちの時代に存在した古川ゆいを解剖・研究して作り上げたもので、たとえゆいが失敗しても、彼女は自動停止モードに入り、やはり奏と仲間たちが別のゆいを作り上げて過去に送るという、無限ループになっています。ループの始まりがどこであったのかは明らかにされてませんが、佳織を救わない限り、ゆいは永遠に同じ時を遡行し続ける運命を科せられているという訳です。
過去に遡行したゆいは当然、佳織を助けるためにあらゆる手を尽くします。ループの始まりと目される世界と、本編のメインとなった時間軸において、佳織はバスの暴走に巻き込まれて植物人間状態になるのですが、たとえば事故に遭う時間、佳織を部室なりに閉じ込めたり、あるいはゆいが佳織と一緒に帰ることで暴走に巻き込まれるのを回避したりしようとするのだけど、その尽くは失敗して、佳織はバス事故以外の原因で帰らぬ人……いえ、目覚めぬ人になります。

ゆいはこの事象を因果の鎖と定義しており、形はどうあれ、佳織は10月14日に何らかの事故で重症を負い、植物人間状態となるのが運命づけられているのです。因果の鎖は強力で、上記したあらゆる回避法が通用しないばかりか、回を重ねるごとによりひどい結果になっているという悪循環。ただし、10月14日の事故を回避することが出来れば、佳織は助かるというのが条件になっていることから、ファイナル・デスティネーションシリーズのようなその場では助かっても死の運命は追いかけてくるという、そういう設定がないのも特徴です。
本編ではゆい、佳織、奏の恋愛模様を交えつつ、ゆいが奏と結ばれることで、逆に言えば佳織が奏に対して失恋することで事故が回避され、佳織が事故に合わなかった世界として時間が経過していきます。その影響で本編のメインの時間軸で事故にあった佳織も目覚めるのですが……まあ、それは本編の話なので今は関係ありません。
一見すると、これが佳織を事故の宿命から救う唯一の方法に思えますが、実は13話のカラクリを利用すれば、上記以外でも佳織を助けることは可能なんじゃないか? というのが今回の本題。
昨日の感想では敢えて触れませんでしたが、13話は一種のタイムリープ、時間遡行が後半のテーマになっており、天文学会の一行は訪れた工場の跡地で、何と80年前に存在した、当時の軍事工場へと迷いこんでしまうのです。それはゆいの存在とAIユニットが大きく関わっているのだけど、AIユニットを扱うことが出来るゆいは、おそらく意図的に過去と未来を繋げることが出来ます。彼女が幽霊の正体と邂逅したことがその証拠で、あのとき、あの空間は間違いなく80年前の過去だった、と言えるでしょう。それは凪沙先輩たちが聞いた旧式ラジオから流れる、戦時中の配給放送からも見て取れます。
そして、このカラクリ、あるいはロジックを利用することで、佳織を救うことが出来るかもしれないのです。

佳織が因果の鎖によって10月14日に事故で眠り姫になるのであれば、10月14日に佳織を存在させなければ、佳織は助かる可能性がある。物理的に隔離しても通用しないのは本編の描写から分かっていますが、時空的に存在しないのであれば、因果の鎖といえど、手出しは出来ないのではないか。13話における軍事工場、あそこは間違いなく80年前の世界ですから、ゆいが再びAIユニットを使って過去に佳織を遡行させることで、現代の10月14日から彼女の存在を一時的に消失させてしまえば、少なくとも佳織の事故は発生しないことになります。
しかも、因果の鎖はあの年の10月14日に佳織が事故に遭うという宿命で、それ以前や、それ以降に影響しないことは本編や原作によって明らかです。であるならば、佳織が10月14日の間、80年前に存在している限り、因果の鎖は彼女に届くことはありません。
これなら佳織は失恋することなく14日を超えることが出来ますし、ゆいや奏が変わりに巻き込まれることもないので、かなり平和的に解決できます。しかも、軍事施設とはいえ、工場の地下部分は比較的綺麗に残っていましたから、80年前が戦中といっても、1日程度ならいても問題じゃないでしょう。今年が戦後70年なのに、80年前って、われめては西暦何年の話なんだとか、そういう疑問は新たに出てきますけど、それはともかくとしても、何故13話の時間軸にいるゆいは、この方法を取らなかったのか? という疑問の方が圧倒的に大きい。

13話は後付なんだから仕方ないと言ってしまえばそれまでだけど、佳織の人生が掛かっていることですから、文化祭前とはいえ、どうにかして説得して、軍事工場に再び連れて行くことは不可能じゃないでしょう。AIユニットは凪沙が所持していますし、時間遡行についても問題ありません。
一つの可能性として、時間遡行中は現代において時間経過が起こってないのではないか? というのがありますけど、作之進とワインセラーで遭遇した描写を見る限り、ゆいたちが過去にいる間も、現代は時間が進行していたと考えるのが自然です。
因果の鎖に対向する唯一の手段は時空間への逃避だった……仮説に過ぎませんが、SF的に格好いいので、私はこの説を押して行きたいと思います。

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